【解説】ジュゴン訴訟 米司法、現状顧みず


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 ジュゴン訴訟で米サンフランシスコ連邦地裁は、米国防総省が名護市辺野古の新基地建設がジュゴンに与える影響について県などの利害関係者と協議したと認定し、手続きは適法と判断した。一方、翁長雄志知事は訴訟の利害関係者だと表明した上で、米側との協議を求めていた。判決は実態とかけ離れており、司法自らが米国家歴史保存法(NHPA)402条の規制を弱めることに加担した格好だ。

 矛盾する判決は、国防総省が2014年に提出した報告書を判断基準にしたことにある。報告書は402条に基づく協議の手続きを完了したという内容になっており、埋め立てを承認した前知事の任期中にまとめられた。

 しかしその後、新基地建設に反対する翁長知事が当選し、16年には環境アセスを問題視して承認取り消しを実行するなど状況は一変。ジュゴンへの影響も議論が続いてきた。その中で、国防総省の14年の報告書で専門家が日本の環境影響評価(環境アセスメント)は価値がないと指摘していることも明らかになるなど、協議の有無の判断を厳しくすることも可能だった。地裁判事が現状に顧みずに、14年の報告書を基準にした判断には疑問が残る。

 原告側は控訴を検討している。控訴審では知事の埋め立て承認撤回など現在に引き付けて法的手続きの不備を争点にできるかが鍵を握る。

 (謝花史哲)