経済

「はいたいコラム」 人を呼び込む棚田の力

 島んちゅのみなさん、はいた~い!

 先日、東京の明治大学で棚田学会大会が開かれました。棚田学会とは、大学や研究機関の技術者や研究者、写真家、行政や保全団体から棚田巡りの好きな市民まで全国300人の会員からなる学会で、「棚田に学ぼう、棚田で遊ぼう、棚田を守ろう」をモットーに、シンポジウムや現地見学会を開いています。

 今年のテーマは「棚田と芸術」。

 コーディネーターを務めた上野裕治さんは、里山の景観保全を専門に、みずから「カカシさっか」として、案山子(かかし)の研究をしています。一般にカカシは鳥除けと思われがちですが、実際の効果よりも上野さんはカカシの役割を、愛嬌のある姿で農作業の疲れを和らげてくれたり、愚痴をこぼす相手になってくれる「農民の友」として生産者の心を支えているといいます。

 日照り、長雨、台風、病害虫、何が起きても農家にはクレームを言う矛先がありません。せめてカカシに愚痴ぐらいこぼしたくなる気持ちもわかりますよね。

 そうして代々、生産者によって受け継がれてきた棚田や里山を、もっと見せる場、遊びに来てもらう場にしようという世界最大級の国際芸術祭が、いま、新潟県十日町市と津南町で開かれています。

 この「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は、2000年から3年に1度開催され、豪雪地帯の里山に、国内外の芸術家が滞在して作品を制作し、人々が鑑賞を楽しみながら里山を巡るアートによる地域づくりイベントとして、世界的にも注目を集めています。

 前回2015年は51万人の来場者を記録し、50億の経済効果や雇用・交流人口を増大させました。

 棚田学会HPによると、棚田は米を作るだけでなく、美しい風景や水資源を守り、洪水や土砂災害を軽減し、多様な生物の棲家となるなど経済的尺度では測れない多くの機能を持っています。

 今回の棚田学会賞を受賞した愛媛県松山市で棚田写真を撮り続けている河野豊さんは、西日本豪雨で被害を受けた地域でも、棚田には土砂崩れがなかったと語りました。

 これぞ人々の暮らしを守る棚田の母なる力です。

 都市と農村や離島との心の距離が離れ、帰る場所を求める人々が増えている今こそ、安らぎを得たり、美しさを愛でる心のふるさととして、棚田や離島が見直されています。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)



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