「ハンセン病の子」といじめ… 沖縄県内の2人が証言する患者家族への差別


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
ハンセン病家族訴訟で被害を証言した県内の女性2人。法廷で「差別はなくなっていない」と訴えた=6日、熊本市

 【熊本で謝花史哲】国が長年続けたハンセン病強制隔離政策のため、患者本人だけでなく、家族も深刻な偏見や差別を受けたとして、元患者の家族で沖縄県内在住の244人を含む568人が国に謝罪と損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が6日、熊本地裁(遠藤浩太郎裁判長)で開かれた。沖縄県の原告女性2人が、国の政策で根付いた差別で本人だけでなく家族も被害を受けている現状を証言。「世の中の多くの人が知ってほしい。被害を国は認めてほしい」と訴え、差別がなくなることを求めた。

 両親がハンセン病患者だった60代の女性は、法廷で母が堕胎手術をし、父は断種していたことを40代で知り「衝撃を受けた」と初めて明かした。生まれてしばらく親戚に預けられたが、幼少期に方言で「ハンセン病の子」といじめられ、偏見をもたれていた体験も振り返り「夜一人で泣くことが多かった」と語った。

 女性は「私は生まれたが、生まれてこなかった子もいる。その子たちも被害者。生まれる前から被害を受けてきた。その子たちのためにも原告になろうと決めた」と語気を強めた。その上で、ハンセン病問題やその差別に「世の中の人は分かっていない。この事実が歴史に残らないことは耐えられない。今もハンセン病は怖がられる。差別ははびこっている。差別をなくす対策は足りていない」と訴えた。

 母がハンセン病患者だった県内の30代女性は、幼い頃に近所の同じ年くらいの子から「ばい菌近づくな」との言葉を浴びせられたと証言。以来、人と関係を持つことを恐れ、友達をつくろうとしないよう幼少期を過ごしたという。

 母が自ら病のことを語ることはなかったが、裁判への参加を勧めたのは母だった。母が過去について語るようになり、裁判を通じて「深い溝がなくなりつつある」と話した。その上で「これ以上差別を広げてほしくない。不安を取り除いてほしい」と裁判所に求めた。