鉄軌道、事業化遠く 内閣府調査 費用対効果微増も


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 【東京】内閣府は15日、2017年度に実施した糸満~那覇~名護間の鉄軌道導入に関する調査結果を公表した。事業の費用対効果を図る費用便益比(B/C)は鉄道を導入した場合が前年度調査に比べ0・02増の0・66、トラムトレイン(専用軌道の路面電車)が同0・01増の0・87となり、共に微増した。だが、事業化の目安となる1・0にはほど遠く、一層のコスト縮減と利用増加策の検討が課題となる。

 調査は那覇~普天間で鉄道は国道330号を経由、トラムは国道58号を経由し、うるま市や恩納村を通るルートを想定した。

 17年度は、前年度までより精度を高めるため、コスト算定に使う地形図を従来の2万5千分の1から、1万分の1レベルに拡大し、調べた。増加が続くクルーズ船観光客のニーズも盛り込んだ。

 概算事業費は鉄道が同110億円縮減して6270億円となった一方、トラムは同40億円増の3千億円となった。鉄道は一部でトンネルを掘る深さが想定より浅くなり、費用が軽減された。一方、トラムは単線での整備を想定していた一部区間で地形の問題から複線にする必要が生じ、コストが増加した。開業後40年間の累積赤字は鉄道が3580億円、トラムトレインが1370億円を見込んだ。

 内閣府は本年度も調査を続ける。最新の国勢調査結果を踏まえて全国を上回る伸びが続く人口動態を反映するほか、地震や津波を想定した最新の安全対策を盛り込み、費用対効果の検証を進めていく。

 鉄軌道導入を巡っては、県は公共予算でインフラを整備し、鉄道会社は運行に専念する「上下分離方式」で整備すれば早期の黒字化が可能だとして、実現を訴えている。これに対し内閣府は、上下分離方式の導入は累積赤字の縮減には効果が見込まれるが、移動時間の短縮や移動費の縮減、収益性などの社会的な効果を測る費用便益比の改善にはつながらないとしている。