小中学生の通学路となっている、沖縄県那覇市識名の県道222号真地久茂地線の歩道に面した擁壁上の民有地に設置されている高さ約1.6メートル、長さ約9メートルのブロック塀が徐々に傾き、倒壊しそうになっていることが25日までに分かった。沖縄総合事務局と県南部土木事務所が、ブロック塀が倒壊しないように塀を支える器具のほか、歩道を覆う屋根を設置するなど応急処置をしている。一方、大阪府北部地震で倒壊したブロック塀の下敷きになって女児が死亡した事故もあり、周辺住民からは「危ない」「撤去してほしい」など不安や対応を求める声が上がる。ただ、民間の塀のため、撤去費用の負担を巡り所有者と行政が対立しており、撤去の見通しは立っていない。
倒壊の危険性があるのは、真和志小と識名トンネルの間にある歩道の擁壁上付近に設置されているブロック塀で、歩道側に押し出されるように傾いている。塀に面する土砂が降雨で少しずつ緩み傾けさせた可能性があり、所有者によると、当初の位置から歩道側に約30センチずれているという。
住民が、倒壊しそうなブロック塀に気付いたのは今年1月。那覇市を通して沖縄総合事務局に相談した。同局は2月、旧道の土によってこれ以上ブロック塀を傾けさせないために塀の下から支える鉄パイプ状の器具を設置した。真地久茂地線を管理する県南部土木事務所も同時期に危険性を認識していたが、防災資材で歩道を覆う応急処置を取ったのは半年たった今月17日だった。双方とも「対応するのは、基本的にはブロック塀を設置した地権者」とし、現在も撤去に至っていない。
ブロック塀がある区画には、以前民家が建っていたが、1997年の道路拡張で立ち退きになった。ブロック塀で仕切られる形で国所管の旧道もあった。ブロック塀が傾いた原因について所有者は、旧道にある土砂の土圧がブロック塀を押し出した可能性を指摘する。そのため「撤去費用は、私と国とで折半するのが筋ではないか」と主張している。所有者によると、県が見積もった撤去にかかる費用は150万円以上だという。
一方、総合事務局は「ブロック塀を設置した地権者に対応してもらうようお願いしている」とし、塀は「個人の財産」で撤去はあくまでも所有者が行うものと強調する。ただ、塀を含めて旧道の整備が必要であれば、「当局として検討していく」とした。(砂川博範)