第9回沖縄平和賞を受賞した日本国際ボランティアセンター(JVC)は、海外の紛争地などで活動する非政府組織(NGO)の草分け的な存在だ。現地で信頼関係を築き、寄り添いながら支援を行ってきており、JVC事務局長の長谷部貴俊さん(45)は「紛争地では非暴力の価値を重く感じる。これからも国内外にその価値を広めていきたい」と意気込んだ。
1980年に発足したJVCの主な活動は、四つ挙げられる。農業の研修などを通して農村の暮らしを支える「地域開発」、紛争地での医療支援などを通して人々の命を守る「人道支援」、教育の機会を広げ、身近なところから暴力の連鎖を断ち切る「平和構築」、政府や国際社会に働き掛ける「政策提言」だ。
現地採用のスタッフも含め、約100人が11カ国で支援に当たる。現地の人たちと一緒に問題解決を模索する方法を特徴としている。長谷部さんは「上からではなく、地域の人が足元から平和構築を担っていけるよう活動してきた」と強調する。
2005~12年までアフガニスタンを担当し、現地に何度も足を運んだ。紛争地に暮らす人たちは暴力にうんざりしており、日本の人道支援を高く評価していたという。日本からは実情が見えにくいとし、JVCは講演や政策提言にも力を入れている。
受賞については「一緒に取り組んできた現地の方々の思いがつながったのだろう。今後もその土地で暮らす人たちの代弁者でありたい」と喜んだ。
<受賞理由>
日本国際ボランティアセンター(JVC)は、インドシナ難民のタイへの大量流入時に「アジア人として、ひいては人間として救援活動を行いたい」というボランティアの有志が中心となり、1980年に設立された。
「全ての人々が自然と共存し、安心して共に生きられる社会づくり」を長期目標に掲げ、カンボジア、ラオス、タイ、アフガニスタンや南スーダンなど世界11カ国で国際協力NGOとして農村での生業改善支援などの地域開発、医療などの人道支援、現地の人々と共に取り組む地域からの平和構築などに加え、国内での災害支援にも取り組んでいる。また、活動現場の事例を政府開発援助(ODA)や援助政策に生かすとともに、対話によって平和な社会が築かれるよう国際機関や日本政府に対する政策提言にも力を入れている。
JVCは、アジア太平洋地域における平和・非暴力実現、人間の安全保障実現の推進という観点から、長い活動歴や多角的・広域的な活動範囲、地域的な広がりにおいて極めて優れた業績を残している。さらに、中期目標では平和構築の活動を積極的に行うことなどを掲げており、これまでの活動が将来にわたって安定的に持続することが十分に見込まれ、平和構築の促進へ大きく寄与する将来性が期待される。
沖縄平和賞委員会は、非暴力主義を基底とし、現地住民の信頼を得ながら地域に根差した活動で「平和・非暴力の実現」を体現し、人間一人一人に寄り添い、緊急に対応する活動姿勢で「人間の安全保障の実現」を促進してきたJVCを第9回沖縄平和賞に最もふさわしい団体と評価して受賞者に決定した。