琉球新報社 
【名護】名護市で、１日から給食費と保育料無償化が始まる。名護市辺野古の新基地建設への協力で得られる再編交付金を活用した。２０１９年１０月から国が始める幼児教育・保育の無償化を先取りした市独自の保育料無償化は、全国的にも先行事例になる。一方で全ての園児が対象とはならず、不公平との声も根強く残る。また保育料無償化で「子どもを預けて働きたい」という保護者が今後増える可能性があり、新たな保育ニーズに市が応えられるかも今後の課題となりそうだ。
保育料無償化は認可園４２園計３２８８人、認可外は１１園のうち４園の計５３人が対象となる。残りの認可外保育園は、沖縄県や市の定める基準を満たしておらず、無償化の対象にならない。
◆賛否両論
保育料無償化で保護者からはさまざまな声が聞こえた。生後６カ月の長男がいる高良里紗さん（２７）は「子育てしやすくなるからとってもいい。本来払うべき保育料を子どもの貯金や学資に備えたい」と期待を込める。
一方、待機児童を持つ保護者からは不満の声も漏れる。８カ月の赤ちゃんがいる女性（４０）は「無償化になったら家庭保育の人もみんな預ける。無償じゃなくていいから半額くらいに安くしてくれたらいい」と語った。３カ月の長女の入所申請中という男性（４０）は「すごくいいと思う」と評価する一方で、「保育園がパンクして待機児童が増えるのではないか」と危惧する。「無償化の前に、子どもを預けられる環境づくりが先だったのでは。順番が違うかもしれない」と話した。
◆待機増の可能性
全国でも先駆けて１６年９月１日から保育料無償化（第２子以降）を始めた兵庫県明石市は、１６年度中に約１６億円かけて認可園を新設したり、定員枠を拡大したりして約８００人規模の受け入れ枠を拡充したほか、保育士確保のための処遇改善などに取り組んだ。１７、１８年度も継続して対策を取っているが、入所希望者は年々上回り待機児童数は５７１人になる。
名護市は、無償化によって予測できる入所希望者数を試算しておらず、保育所へのニーズの増加を想定した対策は、現段階で持ち合わせていない。保育ニーズが高まれば、市による認可園の施設整備や保育士確保の対策が必須となる。
また、認可園に落選した場合は子どもを認可外施設に預けざるを得ず、一部の保護者のみが保育料を支払う現状は、不公平感がさらに強まる可能性がある。家庭保育で娘を育てる３０代の男性は「保育料が大きく異なるのは差別。それを考えてほしい」と求めた。 （阪口彩子）
＜用語＞名護市の幼児教育・保育の無償化
９月１日から全ての認可保育園や認定こども園、小規模保育事業所、幼稚園の利用料を無償にし、一部の認可外保育施設の利用料も月額３万７千円（０～２歳児は４万２千円）を上限に補助する。新基地建設に協力することで得られる再編交付金を活用し２年間で８億６１２７万円を計上した。１９年１０月に始まる国の保育無償化に先駆けて実施する。
