【名護】沖縄県名護市の屋我地島周辺に今年飛来した準絶滅危惧種アジサシの多くが繁殖できていないことが、環境省やんばる自然保護官事務所の調査でこのほど分かった。5月ごろに飛来するベニアジサシとエリグロアジサシは6、7月の調査でそれぞれ約80羽確認できたが、8月の調査ではベニアジサシがゼロ、エリグロアジサシは11羽にとどまった。保護官事務所によると何らかの原因でアジサシが繁殖に失敗し、屋我地周辺から離れた可能性があるという。
自然保護官事務所の上開地広美保護官補佐は「繁殖場所の岩礁に人が上陸したことが影響した可能性がある」と話している。
保護官事務所によると、渡り鳥のアジサシ類は例年、繁殖や休息のため、屋我地島など県内の周辺の岩礁などを利用するという。例年は9月ごろまで、子育てや成長したひなが飛ぶ姿が確認できるという。
今年6月の調査では、屋我地島周辺の岩礁では、エリグロアジサシとベニアジサシがそれぞれ80羽程度確認できた。7月も同数のアジサシを確認し、繁殖の様子も見られた。しかし8月7日の調査では、ベニアジサシはゼロ、エリグロアジサシは11羽だった。2006年から始めた調査では、8月としては最も少ないという。
保護官事務所では、8月の数の少なさについて、何らかの原因でアジサシが繁殖に失敗し、屋我地周辺から離れた可能性があるとみている。その原因として、台風や高波、カラスの攻撃、人が岩礁に上陸することなどが考えられるが、上開地自然保護官補佐は「7月から8月まで大きな台風はない。自然的な要因は考えにくく、人が上陸したことが原因になった可能性が高い」と指摘する。
屋我地鳥獣保護区の渡久地豊管理員は「アジサシが営巣中の岩礁に釣り人が上陸し、釣りをした場合、その巣をアジサシの親が諦めてしまう。アジサシがいる岩礁には近づかないでほしい」と話した。
(友寄開)