新基地反対根強く 名護市議選、辺野古反対過半


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
開票のために、投票箱から出された投票用紙=9日夜、名護市中央公民館

<解説>

 9日の名護市議会議員選挙で、与党13、野党12、中立1の議会構成となった。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進める政府は、与野党勢力の行方に関心を示し、名護市議選を注視していた。与党が半分の議席を獲得したものの、与党の公明2人を含めて過半数の市議15人が辺野古移設に反対しており、渡具知市長を支えながらも辺野古移設反対の思いは広く共有されている。

 渡具知市政は、基地建設を受け入れたことで得られる再編交付金を活用し、学校給食費と保育料無償化を今月1日からスタートした。渡具知市長が積極的に応援した与党候補は、子育て世代など幅広い世代からの支持を得て、票を獲得した。

 与党が半数を占めた背景には、工事が着々と進む現状を目の当たりにし、名護市民に「諦め感」が広がったことも大きい。移設に反対する有権者も「工事が止まらないなら、もらえるものはもらわないといけない」(60代男性)と主張し、政府が強行する移設工事を名護市民で止められないとする閉塞(へいそく)感が漂っていた。

 一方の野党は2議席減らしたものの、新基地建設阻止を訴え、一定の支持を得た形だ。

 今回の市議選では「基地ノー」の声も根強く残る一方、振興策などの「豊かな暮らし」を求める声も強まっていた。

 これまでの名護市議会は少数与党で、6月議会は再編交付金の在り方を巡り紛糾した。今後は与野党が伯仲したことで、議会運営が安定するかは不透明だ。基地建設が進む一方で、政府の振興策が名護に向けられることになる。渡具知市政は、基地と振興策をリンクさせた政府の「アメとムチ」の手法の下、地域が抱える課題解決にどう取り組むか、注目される。
 (阪口彩子)