海外留学中の選挙 知事選に投票できない… 「住民」であることが要件


この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香

 「留学中ですが、今度の知事選で投票はできますか。海外に住んでいたら選挙にはどうやって参加するのでしょうか」との疑問が、米国留学中の大学生から取材班に寄せられた。海外でも投票ができる「在外選挙制度」は国会議員を選ぶ国政選挙に限られるため、今回の知事選では投票はできない。そもそも選挙権はみんなに平等に与えられる権利じゃないの? なぜ地方選挙は海外で投票できないの?

■在外選挙制度

 留学や仕事で海外に住む日本人は、現地にいながら衆院選と参院選に票を投じることができる仕組み「在外選挙制度」がある。大使館などの在外公館に設けた投票所や郵送で投票する。

 在外選挙は、公職選挙法の改正に伴い、2000年5月に衆参両院選挙の比例代表のみ投票ができるようになった。その後、比例代表でしか投票できないのは憲法違反だとし、在外邦人13人が国を相手に提訴。05年、最高裁は「憲法は国民固有の権利として選挙権を保障している」などとして違憲の判断を示した。現在は、衆院選の小選挙区と参院選の選挙区でも投票できるようになった。

■在外での地方選挙

 国政選挙の在外選挙制度は整えられてきたが、地方選挙はなぜだめなのか? 公職選挙法では選挙権を次のように定めている。「日本国民で満18歳以上であり、引き続き3カ月以上その都道府県内の同一の市区町村に住所のある者」

 県選挙管理委員会によると「国政選挙は『日本人』」という国籍要件、地方選挙はそれに加え『3カ月の居住期間』という住所要件が入っている」という。国政選挙は、国の代表を決めるため「主権者は日本人であること」が前提だが、地方選挙は「住民が住民の代表を決める」のが前提。そのため、投票日から起算して3カ月間、選挙区内に住所がなければ住民として認められない。この住所要件が、海外に住む日本人の地方選挙への選挙権を阻んでいる。

 琉球大学の島袋純教授(行政学・地方自治論)は「地方自治と国の自治への参加は同レベルの重要度で、本来なら在外邦人の地方自治への参政権は与えられるべきだ」と強調。「国政選挙を優先して制度改正が進んだのだろう。地方選挙はこれからではないか」と話す。

■制度の改正

 現在の在外選挙の仕組みを決定付けた05年の最高裁判決では、現制度が整えられるまで長期間放置されていたことについて、「やむを得ないとは到底言えない」と国会の怠慢を批判している。

 30日、沖縄では知事選がある。選挙離れが叫ばれる昨今、一部制度が整えられておらず、「投票したい」という思いを実現できない人もいる。 (文化部・新垣若菜)