上昇率全国一の沖縄の地価、今後どうなる?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

<解説>
 沖縄県内の基準地価変動率は全用途平均と住宅地、工業地で全国首位となり、商業地でも京都府に次いで2番目という高い伸びを記録し、地価上昇は一層顕著となった。好調な県経済を背景に、主に本島中南部で地価が大きく伸びた。観光客の増加に伴い、ホテルや道路などさまざまな用途で土地の供給不足が顕在化していることから、引き続き上昇傾向は続くとみられる。一方で本島周辺離島や北部地域などでは地価が下落した自治体もあり、二極化の様相が浮き彫りになった。

 沖縄は全国でも数少ない人口増加地域で、コストの安い木造家屋にシフトする動きも出るなど、地価が上昇しても宅地需要は根強い。観光でもアジアを中心とした外国客が増加傾向で、那覇空港の第2滑走路延長など将来的な需要増を見込み投資が増えている。住宅ローン金利の引き下げなど、資金調達が数年前に比べて容易になっていることもあり、住宅建設や新規出店が活発になっている。

 不動産鑑定士の高平光一氏は「この1、2年は開発して収益を上げるのではなく転売利益を目的とした取引も出てきてはいる。しかし割合としては少なく、基本的には実需に基づいた取引と考えられる」と分析する。観光産業に大きく影響するテロや伝染病、金融危機のような非常事態がない限り、当面地価の下がる要因はないという。高平氏は「普天間飛行場の返還は土地の大量供給になりかねず、その時には周辺価格が少し落ち着く可能性があるが、逆に新都心地区のようにさらに発展して価格が上昇する可能性も高い」と指摘した。

 商業地で15・1%と大きく伸びた八重瀬町が特徴的だが、中南部では道路整備や区画整理などにより利便性が向上した自治体で高い上昇率が目立った。

 一方で交通の便が限られ観光需要の取り込みが難しい一部離島や、商業地の取引が少ない本島北部地域の自治体では下落もあり、二極化の傾向が現れた。地域格差を放置すれば、人口の中心地への流出が進み、さらに過疎化するという悪循環を招きかねない。県全体で発展するための施策が必要となる。
 (沖田有吾)