メッシュ救急ヘリ中止 11月から 資金難で小型機移行 北部の活動制限


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救急ヘリ事業をやめ、小型飛行機での運航に移行することを説明するNPO法人メッシュ・サポートの塚本裕樹理事長(左)と玉城佑一郎理事=21日、県庁

 民間救急ヘリを運航するNPO法人メッシュ・サポートは21日、名護市を拠点にしたヘリによる救急活動をやめ、11月からは那覇空港から医療用小型飛行機での救急や帰島搬送に移行すると発表した。活動範囲が広がり、奄美や宮古、八重山地方の患者も搬送できるようになる。一方で小回りの利くヘリと異なり、空港がない地域での搬送は制限される。

 2007年6月、北部地区医師会は救急医療体制の改善に向け、救急ヘリの運航を始め、08年からはメッシュが引き継いだ。14年1月から北部振興事業を活用し、国と北部12市町村から補助金約9400万円を受けていた。17年4月に補助金が打ち切られ運航休止に。ことし3月から週5日に縮小して活動を再開したものの、資金繰りに苦慮していた。12市町村に支援を求めてきたが、現在までに補助再開の見通しはない。これまでのヘリでの活動件数は1556件に上る。

 メッシュによると、ヘリはメンテナンス費や点検代が高く、ガソリン代もかさむ。週5日運航するには年間で約7300万円が必要となるが、小型飛行機だと約4500万円の運営費となる見込み。メッシュは近年、年5千万円ほどの寄付を受けており、小型飛行機であれば運営が可能と判断した。使用していたヘリは近日中に手放す。

 今後は本島で治療を受けた離島在住の患者が、島に戻って緩和ケアを受ける帰島搬送に力を入れる。塚本裕樹理事長は「低コストで支援が必要とされるところにシフトする決断をした」と強調する一方、「北部での活動は制限される。こうせざるを得ない状況に、気持ちとしてはやりづらい部分もある」と述べた。

「急病どうすれば」 北部住民

 【北部】NPO法人メッシュ・サポートのヘリが主な活動をしていた本島北部や離島の住民らは、地域の救急医療サービス低下を懸念する。「急な重病人にどう対処すればいいのか。運航は必要だ」と再開を願う声が上がった。

 国頭村の宮城久和村長は「村の医療体制を支えてもらっていた。資金面などの課題を北部12市町村で共有できなかったことは残念」と話し「ヘリの撤退は県全体で考えないといけない」と訴えた。国頭村奥の玉城壮区長(76)は「以前から寄付だけでは持たないという話だった」と残念がる。北部病院や北部地区医師会病院がある名護市まで、集落から車で2時間近く。「へき地は置いていかれる一方だ」

 離島の急患搬送でも活躍したメッシュのヘリ。伊平屋村前泊の津田隆さん(69)=漁業=は「伊平屋には飛行場がない。ヘリでの急患搬送ができなければアウトだ」と強調する。「運航再開は絶対必要だ。(再開に向けて)行政には支援してほしい」と要望した。

 メッシュに複数回寄付をした東村観光推進協議会の小田晃久事務局長は「今後も私たちにできることがあれば協力していきたい」と申し出た。