【名護】米軍普天間飛行場移設に伴う新基地建設で予定地に隣接する名護市辺野古区への個別補償問題を巡り、辺野古区民が揺れている。国からの個別補償が無くなったことを受け「条件付き容認」を掲げてきた区民からは「補償が無いなら基地は来てほしくない。今からでも反対決議をすべきだ」「国には責任がある。このまま(基地を)造られてはたまらない。政府と対峙(たいじ)するつもりで個別補償をしっかりと求めるべきだ」といった声が挙がっている。
26日、辺野古公民館で開かれた行政委員会では、臨時の区民総会を開き、区民全員に個別補償について説明するよう求める声が上がった。区はこれまで、個別補償を「実施できない」とする沖縄防衛局からの通達について、区民に説明する場を設けていない。
出席した行政委員によると、臨時の区民総会について「時期尚早」との意見があり、政府との懇談会開催後に、10月以降に改めて行政委員会を開いて臨時の区民総会を開催するかどうかを決めるとした。
行政委員の一人は「補償問題は防衛局との交渉でなくて、政府の上の方と話をしないといけない。区民総会に防衛大臣を呼ぶ位の気持ちでやらないといけない」と強調した。別の行政委員は「(個別補償を)一生懸命交渉しているが歯が立たない。大きな国とちっぽけな区が、どれだけやっても勝てることはない」と無力感を示した。
区民総会の開催を区長に要請した西川征夫さん(74)は開催の有無の決定が先送りになったことについて「言語道断で理解不能だ」と憤った。その上で「容認条件の一つが頓挫した。今後どうするか改めて区民の意見を聞くべきだ」と強調する。委員会を傍聴した60代の男性は「18人の委員だけでなく区民一人一人の意見を聞くべきだ。白黒はっきりしてほしい」と訴えた。傍聴した金城武政さん(61)も「政府とどんな交渉をしているのか。これまでも報告を求めたり議事録公開を要請したりしてきたが、何一つ応えない。不透明なまま『容認』を押し付けられている」と指摘した。
これに対して辺野古の嘉陽宗克区長は「政府との懇談を調整中だ。懇談の結果を踏まえて改めて検討したい」と述べるにとどめた。