今回の県知事選挙は、日本復帰から半世紀を迎える2022年までの沖縄のかじ取り役を決める選挙だ。沖縄戦や米国統治下、復帰後も変わらない米軍基地の過重負担など、沖縄が踏みにじられてきた過去の歴史に真摯(しんし)に向き合いながら、今立っている地点を認識しつつ、これからの沖縄をどう導いていくのかが問われる。候補者らは演説でそろって「未来」を掲げており、将来世代への責任を強く意識したリーダーを選択する選挙になる。
今回は、投票権が18歳以上に引き下げられて初の知事選となる。各陣営とも若者の支援者が中心になり、これからの未来を担う若者が注目する施策を発信してきた。沖縄キリスト教学院大の学生らが「VOTE! #みんなごと 若者たちが考える知事選」を企画するなど、若者の政治参画への意識が高まっている面もある。若者の政治離れをどう食い止められるかも試される。
米施政権下で米高等弁務官が任命していた行政主席を、沖縄の住民が直接、自身の意思で初めて選んだ主席公選から今年はちょうど50年目の節目だ。住民らが自治権の拡大を求めた象徴的な政治行動だった。それから50年が経過し、今回の知事選は改めて自治権の在り方を問う選挙となっている。
琉球王国時代に明治政府に併合(「琉球処分」)され、沖縄戦で日本本土から「捨て石」にされ、日本国の独立から切り離され、戦後復興の中から取り残されてきた沖縄。さらに日本復帰後も、変わらない米軍基地の集中―。沖縄への基地集中を支えてきたのは、安倍晋三首相や石破茂元自民党幹事長らも認める「本土の無理解」だ。それはとりもなおさず差別の構造だ。
今知事選は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設が最大の争点として戦われた。ここで問われていることは、そのまま本土の国民一人一人にも突き付けられた問題でもある。 (滝本匠)