沖縄県知事選で名護市辺野古の新基地建設に反対する玉城デニー前衆院議員が圧勝したことで、政府は県の埋め立て承認撤回への対抗措置に踏み切るタイミングを慎重に見極めざるを得なくなっている。速やかに手続きを進めれば選挙結果を顧みず強行する形になり、反発が一層広がり、政権運営に悪影響が生じかねないからだ。一方、県側は明確に示された「ノー」の民意を盾に、一歩も譲らない構えを見せる。
菅義偉官房長官は1日の会見で、辺野古移設を進める政府方針が変わらないことを強調しつつ、4日に知事に就任する玉城氏と「日程が合えばお会いしたい」と述べた。4年前の知事選では、当選した故翁長雄志氏とその後約4カ月会談することはなかった菅氏だが、玉城氏とは早い段階で接触する意向を示した。
今後の焦点は、県の埋め立て承認撤回により止まった工事の再開に向け、政府が法的措置にいつ着手するかだ。知事選で政権が支援した佐喜真淳氏が勝利することも見込み、選挙戦への影響を警戒し判断を見合わせてきたが、有権者は移設に反対する玉城氏を選んだ。
選挙結果が政権に打撃となる中、政府内には「強引に進める印象は政権運営全体にも悪影響を及ぼしかねない」(関係者)との見方がある。今月9日には閣僚も出席を検討する翁長氏の県民葬が控え、県民感情を刺激するのを避けたい思惑もあるとみられる。
一方で、新基地建設阻止を掲げる県側は警戒する姿勢を崩さない。
当選から一夜明けた1日、玉城氏は富川盛武、謝花喜一郎両副知事を続投させると表明した。翁長氏の急逝という不測の事態に対処し、撤回手続きを主導した2氏の手腕が引き続き新県政でも不可欠と判断したためだ。政府がいつ対抗手段に打って出るか不透明な中で、4日の就任を前に万全の態勢を整える。
謝花氏は1日、選挙結果を受けて「慎重な検討を重ねた上で撤回に踏み切った。政府が法的措置を取るなら専門家にも相談し、仮に裁判になればしっかりと受けて立つ」と語った。
(當山幸都、明真南斗)