審判38年 笑顔の引退 思い出の試合「全部」 安富薫さん(65) 高校球児から胴上げ


社会
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興南高校の球児に引退の胴上げをされて照れ笑う安富薫さん=1日、沖縄市のコザしんきんスタジアム

 1日にあった高校野球県秋季大会準々決勝・興南―宜野湾戦の終了後、塁審を務めていた安富薫さん(65)の審判引退式がマウンドで行われた。家族と記念撮影後、足早にグラウンドから去ろうとしたが、興南の我喜屋優監督の合図で駆け寄った球児らによる胴上げが始まり、安富さんが宙を舞った。笑顔に囲まれた引退に「思い出に残る試合は沖尚とか、興南とか。あれよ、全部さ」とはじける笑顔があった。

 宜野座村漢那出身で宜野座中、中部農林高校で白球を追った。卒業後は大阪の中山製鋼で野球を続けたが「実力差を感じた」と振り返る。沖縄に戻り、JAおきなわ宜野座支店に就職。その頃から社会人の軟式野球の審判を20年、高校野球の審判を18年続けた。

 長男の安富大志さんは名護商工高校野球部を指導する。次男の安富勇人さんは宜野座高校主将として、2001年の春と夏の甲子園に出場し、21世紀枠で臨んだ春は4強の結果を残した。今は那覇工業高校野球部の責任教師。

 野球一家の父として、「長い間、高校野球の審判を続けられたのは息子や家族からの激励のおかげだよ」と感謝する。

 高校野球のグラウンドは去るが「地区大会の審判や、孫ら少年野球の指導をしようと思う。野球だけでなく親とか物の大切さとか教えていくよ」と話し、故郷の宜野座村で小さな球児たちを育てていく。
  (嘉陽拓也)