経済

「はいたいコラム」 嘆くよりも前進する力

 島んちゅのみなさん、はいた~い!台風去ってまた台風、沖縄県内でも停電や各被害が続き、お見舞い申し上げます。地震から1カ月たった北海道厚真町を訪ねてきました。市街地を抜け、田園地帯の吉野地区へ進むと、地割れやがけ崩れが目立ち始めます。厚真町は、明治の開拓期から稲作に取り組み、米どころとして知られています。これからの稲刈りを前に、黄金色の田んぼには、土砂もろとも倒木が流れ込んでいました。損害に加えて生産者の落胆はいかばかりでしょう。

 そんな思いをよそに、道路脇に車を停めては写真を撮ったり、辺りを伺って徐行するわたしのレンタカーは不審に映ったようです。なんと、巡回中の警察の車に呼び停められ、人生初の職務質問を受けました。身に覚えはありませんが、心臓バクバク。「どこから来たのか、免許証を」と言われ、農業の様子を知るために東京から来たと説明し、免許証を渡しました。2人組の1人が車に戻って照会している間に、もう1人が世間話をしてくるので聞いていると、倒壊した家屋や、避難所にいる留守宅を狙ってレンタカーでわざわざ遠方からくる空き巣がいるとのことでした。すぐに解放はされましたが、いいようのない緊張と、ここは今非常事態なんだという現実を知りました。

 翌日は千歳市の酪農家、中村由美子さん(62)を訪ねました。発電機を借りて搾乳はできたものの、集乳が来ず2トンの生乳廃棄を余儀なくされました。1リットルパック2000本、およそ20万円の損失に加え、懸命に育てた牛のお乳を捨てる気持ちはやるせなかったでしょう。

 千歳市駒里農協の理事でもある中村さんは、ソバの栽培と店も営んでいます。実は千歳での被害は地震よりも台風の方が甚大で、今年の収穫はなんと例年の3割しかありません。しかし、畑被害やあちこちの倒木を見ながら中村さんが、「この冬は薪(まき)に困らないねと話してるんですよ」と笑ったとき、大地を耕す人のしなやかな強さを見ました。

 自然現象を「災い」で終わらせず、どう転じて「恵み」にするか。農家はそうした知恵と技と、前進する思考回路を持っています。それは嘆くよりも、前に進むことを選んだ生き方にも思えます。自然との対話を私たちは生産者からもう少し学ぶことができるのではないでしょうか。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)



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