独居高齢者 地域とつながり希薄 見守り支援 人員・情報足りず[県都を歩く ’18那覇市長選]下


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橋の桁下で雨宿りをしながら、拾ってきた廃材で作業する男性。一人暮らしだが「さみしくはない」と話す=12日、那覇市若狭

 しとしとと冷たい雨が降る12日の午後、那覇市若狭の橋の桁下で男性(82)が1人たたずんでいた。荷台に空き缶を積んだ自転車を横に置き、拾ってきた鉄製の廃材をペンチで曲げている。「誰ともいたくなくて1人だけど、困ったことはないよ。病気になったら死ぬだけさ」。ひょうひょうと語りながら、黙々と作業を続けた。

 32万人が住む中核市、那覇。第7次なは高齢者プランによると、那覇市の高齢化率は2007年の17・2%から年々増え、16年には20・9%。そのうち独居高齢者は16年で1万9410人と10年間で32・4%増となった。地域とのつながりが希薄化する都市部で、高齢者の見守りは大きな課題となっている。

 男性は20代のころに、宮古島から那覇市に移住した。土木業で働いていたが、30年前に辞めた。今は一人、アパートで年金を頼りに暮らしている。デイサービスには行かず、近所の人と話をすることもないという。「仲のいい友達は2~3人いたけど、みんな死んだ。さみしいことはない」と話しつつ、記者が離れようとすると「もう行くの?」と尋ねた。

 「いーち、にー、さーん…」。那覇市真和志支所の地下会議室に元気な声が響く。高齢者の介護予防を目的にしたちゃーがんじゅう体操だ。10日は、30人以上が集まった。女性がほとんどで男性は2人だけ。参加者に向かい合い、声を掛けるのは講師の福島邦弘さん(71)。那覇市内のアパートに1人で住む。東京から12年前に単身で移住。沖縄に身寄りはない。

 仕事を辞めた3年ほど前、家に引きこもりがちになった。あいさつ程度の会話ができるアパートの住民は1人か2人。「本当に孤独だった」。ちょうどその頃、段差のない歩道でつまずくことが増えた。「これはまずい」と感じ、市役所で紹介されたがんじゅう体操に参加した。講習を受けて昨年講師になり、今は週4回、市内各地で体操を教えている。体操を通じて人とつながりができた。今では福島さん自身が、体操に参加する高齢者の見守り活動をできないか模索中だ。

 地域の見守り活動などの拠点となる市の地域包括支援センターは本年度、12カ所から18カ所に増えた。今後、市は全小学校区に設置する予定だ。しかし、センターとやりとりする福島さんは「職員と情報が足りていない」と話す。「(高齢者側は)窓口の情報が分からない。包括は困っている高齢者全てをカバーできていない。見守りをする人を増やす必要がある」と指摘した。 (’18那覇市長選取材班)