<解説>
辺野古新基地建設に伴う沖縄県の埋め立て承認撤回に関し、防衛省が行政不服審査法に基づく対抗措置に踏み切った。2015年の埋め立て承認取り消し時と同じく、国民の権利保護のための制度を使って防衛省自身を「私人」とみなす手法も引き継がれた。当時は止まっていた移設手続きを約2週間で再開させており、今回も短期間で国交相が執行停止の結論を下すとみられる。前例を踏まえ早期の工事再開につなげる確実な道を選択したといえ、県側が求める対話を顧みない姿勢が際立つ。
行政不服審査法は第1条で「国民の権利利益の救済を図ること」を目的に掲げる。15年の承認取り消しの際には、国民を救済するはずの同法の制度によって防衛省が国交相に“救済”を求めたことが批判を浴びた。
その後、同法が改正され、第7条に国や地方公共団体による処分を審査請求の対象外とすることが明確に位置付けられた。だが、今回の法的措置でも防衛省の担当者は「われわれの考えとして行政不服審査法は一般私人に限定していない」として、審査請求ができる立場だと説明する。
防衛省は国交相に提出した申し立て書で、県が撤回で指摘した問題点のいずれについても「当たらない」と主張した。辺野古沖の「軟弱地盤」の存在は埋め立て承認の後に発覚したことで撤回の事由となったが、防衛省はまだ結論が出ていないことを理由に「承認の段階と変わってない」として、県側の疑念に十分回答してはいない。
15年に県が埋め立て承認を取り消し、政府が対抗措置に踏み切った後、双方の対立は訴訟合戦に発展した。今後の政府の対応が再び「自作自演」(玉城デニー知事)に終始すれば、今回も同様の事態に発展する可能性は高い。
(當山幸都)