認可外園の認可移行「在園児は継続保育を」 西原町議会が陳情趣旨 採択


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【西原】閉園する認可外保育園「こばと保育園」の職員や保育方針を受け継ぐ認可園「こばとゆがふ保育園」の来春新設に伴い、町外から通う園児らの継続保育が危ぶまれている問題で、西原町議会(大城好弘議長)は18日、保育継続を求める保護者の要請を全会一致で趣旨採択した。しかし、継続保育の可否は未確定。不安を抱える保護者は25日、上間明町長に直接継続保育を訴える。

 趣旨採択は採択はしないが趣旨には賛同する議決で、拘束力はなく、西原町が町外からの入所を認めない場合は継続保育を受けられない可能性もある。

 18日の西原町議会最終本会議で、文教厚生常任委員会の伊計裕子委員長が「保育の在り方に対する保護者の熱い思いに共感し、全ての議員が『何とかしてあげたい』と思った」とした上で「別法人で『こばとゆがふ保育園』を創設する手続きを行っている。町としては待機児童解消のための認可保育園で、町外の児童の保障を約束することはできないが、空きがあれば入所できるとのことだ」と述べ、趣旨採択の経緯を説明した。

 西原町は本紙の取材に対し、9月末現在で待機児童数が231人に上っているとした上で「空きがあれば(継続保育の)可能性はあるが、認可保育園への配置は町内の待機児童を優先する」としている。

●保護者「継続認めて」 新設園への通園実現訴え

県子育て支援課の久貝仁課長(右から2人目)にこばと保育園の現状を説明する園児の保護者(手前)=18日、県庁

 こばと保育園の保護者らは18日、西原町議会を訪れ、保護者一同で提出した継続保育の陳情の採択を見守った。拘束力のない趣旨採択で、継続保育が保障されない現状に変化がないことに対し「とても不安だ」などの声が上がった。保護者からは「西原町が誇りにできるような素晴らしい保育園だ。ぜひ継続保育を認めてほしい」などの切実な声が上がった。

 保護者らによると那覇市では認可外保育園から認可保育園に移行した保育園に対し、市が在園児の継続保育を保障した事例もあり、「西原町も在園児が同じ園で継続して保育を受けられるよう工夫できないのか」などの声もあった。

 こばと保育園は1978年に開園した。埼玉県のさくら・さくらんぼ保育園の創設者である斎藤公子さんが考案した「リズム遊び」や自然との触れ合いなどを実施する保育園で、0歳児から6歳児(年長児)までの一貫保育が特徴。雑巾がけや園のさまざまな行事に参加できる「年長」に上がることを目指し、子どもたち同士で励まし合いながら成長していく保育を実践している。障がい児保育にも実績がある。

 同日午後、こばと保育園の園児の保護者3人が県庁を訪れ、県子育て支援課の久貝仁課長らに現状を説明した。久貝課長は「住民に対する保育の責任はそれぞれの市町村にある。住んでいる市町村で保育園を探せないか」と述べた。保護者は園児の多くは那覇市や浦添市、宜野湾市などから通っており、住んでいる自治体も待機児童問題を抱えていると指摘した。久貝課長は「皆さんの思いは西原町に伝える」と述べた。

◇識者談話 浅井春夫氏 保育受ける権利 保障を

浅井春夫氏(立教大名誉教授)

 行政には保育を受ける権利を保障する責任がある。認可保育園の新規開設であっても、保育方針や保育士が引き継がれるのであれば、継続して保育を受けられる権利を保障すべきだ。認可化を理由に越境入園を認めないことはあってはならない。

 待機児童の解消は重大な課題で、行政が頭を悩ませているのも理解できる。だが、現在在籍している子どもたちの保育の権利を保障するのが基本で、それを前提にした議論が必要だ。町外に住んでいるから退園はやむを得ないと切り捨てるのではなく、保育を継続できるような対応を模索すべきだ。

 例えば、応急措置として施設の広さや保育士などを見ながら、児童福祉法で定められている受け入れ定員を増やして継続保育ができるように配慮することも一つの方法だ。「町内の子どもが優先なので、町外の子どもは出て行ってください」という対応は、保育を受ける権利の剝奪であり、行政としてやってはならない。保護者が居住する自治体と保育園のある自治体が協力して越境入園に向けて調整するなどして、保育を受ける権利を守ってほしい。

 (立教大名誉教授、児童福祉論)