米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、沖縄防衛局が県の埋め立て承認撤回取り消しと執行停止を求めた件で、沖縄防衛局は国土交通相に提出した文書で故翁長雄志前知事の「撤回を必ず行う」との発言などを挙げ「結論ありきで行政権限の乱用だ」と主張していることが22日、分かった。その上で撤回処分は「違法で不当」だと結論付けた。2015年に県が承認を取り消した際と同様、「国も私人と同じ立場で行政不服審査法に基づき審査請求できる」と強調している。
琉球新報が同日までに入手した審査請求書と執行停止申立書で判明した。県は撤回について「法に基づき判断した」と主張、正当な権限行使だと説明している。
「私人と同じ立場」の理由として政府は仲井真弘多元知事から通常の事業者と同じ手続きで埋め立て承認を得たことなどを挙げている。ただ、撤回で生じる不利益に普天間飛行場の固定化や米国との信頼関係が損なわれることなどを挙げている。
これについて白藤博行専修大教授(行政法)は「私人と同じだと言いながら国益の損失を主張している」と矛盾を指摘した。
防衛局は、県による埋め立て承認撤回について(1)県は防衛局に十分な反論機会を与えずに撤回した(2)県が示す撤回理由が抽象的な恐れや可能性を示すにとどまる(3)撤回による甚大な不利益が生じる(4)行政権の乱用だ―などと主張している。
その上で、埋め立て工事ができなければ、普天間飛行場の危険性除去が滞って見通しが立たなくなるとし「辺野古移設が唯一の解決策」との考えを強調した。
執行停止申立書では、工事が停止している間も現場の維持管理などに1日当たり約2千万円の支出があることなどを記述し、工事を再開する緊急の必要性があるとした。
執行停止の取り消しを求める審査請求書と添付書類は65ページ、効力の停止を求める執行停止申立書と添付書類は13ページある。