エジプトでの公民館づくりに向けて、エジプトと那覇市の繁多川公民館をつなぐ企画が始まっている。1月には繁多川公民館とエジプトのカイロをネットで結ぶ「グローバル公民館」を開催。9月には、繁多川公民館館長で、NPO法人1万人井戸端会議代表理事の南信乃介さんがエジプトを視察した。民主化したばかりで住民自治が不十分なエジプトと、地域とのつながりが希薄化している日本。エジプトでの地域拠点づくりや互いの課題解決のためにも、世界とつながる公民館に期待が高まっている。
繁多川公民館とエジプトをつないだのはエジプト在住のモハメッド・アブデルミギードさん(通称・ギドさん)と、沖縄出身の美幸さん夫妻だ。
ギドさんは、2004年に世界青年の船に参加して各国の教育の違いを実感し、「教育こそが国の発展につながる」との思いを抱いた。帰国後に日本の公民館に注目し「エジプトの環境に合う公民館をつくりたい」と熱望してきた。2011年から15年まで沖縄で暮らした際、繁多川公民館の講座で実践的に公民館の役割を学んだ。
しかし、民主化後のエジプトでは市民運動や住民同士の集まりに、政府による厳しい監視の目が向けられている。日本のような地域拠点がある公民館はまだ難しいため、決まった拠点を持たずに企画ごとにネットで世界とつながる「グローバル公民館」が、公民館づくりの第一歩となった。
1月、グローバル公民館初の講座がエジプトのカイロ市内の民間施設と繁多川公民館で行われた。ネット中継で結び、互いの教育や文化について全4回の講座を開催。9月には国際交流基金の事業として、南さんと民間で拠点づくりを展開するタウンキッチン執行役員の西山佳孝さんらがギドさんの案内でエジプトの大学や民間拠点を訪れ、意見を交わした。
10月29日の報告会で登壇した美幸さんは「国を超えて一人の人として集まり学べることが大事」と話した。南さんは「自分の価値が上がったと実感できる場がエジプトでは求められている」と報告。「エジプトの役に立つ公民館は日本の公民館の最先端とも言える。日本の公民館を見直す契機にしたい」と話した。
(中川廣江通信員、田吹遥子)