「奄美・沖縄」再推薦へ 2020年、世界遺産目指す


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国際自然保護連合(IUCN)の勧告で、世界自然遺産指定に向けた管理計画の中に組み込まれるよう求められた米軍北部訓練場=2016年10月、東村(小型無人機で撮影)

 【東京】政府は2日、2020年の世界自然遺産登録を目指す候補として「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に再推薦することを決めた。菅義偉官房長官が同日の記者会見で明らかにした。菅長官は「奄美・沖縄」の再推薦を決めた理由に、自然遺産の案件が優先審査されることや、諮問機関であるIUCN(国際自然保護連合)からすでに一定の評価を得ており、登録が認められる可能性が高いことを挙げた。

 政府は今後、閣議了解を経て来年2月1日までに推薦書を世界遺産センターに提出する。来年夏~秋ごろに諮問機関であるIUCNによる現地調査が行われ、2020年夏に開催される遺産委員会で登録の可否が審査される見通しだ。

 評価基準(クライテリア)は、絶滅の恐れのある種が生息するなど、生物多様性があるとする項目を満たすとした。

 来年の推薦を巡っては、文化遺産候補の「北海道・北東北の縄文遺跡群」などとも競合。世界遺産の推薦枠は文化、自然合わせて1国1件に制限されるため、「奄美・沖縄」が再び推薦されるかが焦点だった。

 「奄美・沖縄」は、今夏の遺産登録を目指していた。だが、IUCNは5月、内容の抜本見直しを求める「登録延期」を勧告。遺産登録の可能性が低くなり、6月に推薦を取り下げた経緯がある。

<解説>汚染除去なお課題

 国が世界自然遺産の登録に向け奄美・沖縄を再び推薦することを決めた。ユネスコの方針で国は文化遺産を含めて1候補しか推薦できなかったが、自然遺産の優先性などから国内の関門は突破した形だ。ただ国際自然保護連合(IUCN)の勧告で指摘された課題の多くが残る。

 延期勧告の最大要因となった米軍北部訓練場の返還跡地に関しては、国は6月にやんばる国立公園に編入して世界遺産の推薦地に組み込む段取りを整えた。来年夏に予定されるIUCNの視察はこの跡地も含まれる。返還跡地からは、沖縄防衛局による汚染除去作業後も不発弾やごみなどが見つかっており、土壌汚染も発覚している。視察で専門家が跡地の環境をどう判断するか懸念がある。

 勧告は返還されていない残る訓練場について、自然保護や管理のため米軍との協力態勢づくりを求めた。ただ新たな取り決めなどは見えてこない。

 国は今後3カ月間のうちにユネスコに推薦書を提出しなければならず、時間は限られている。2020年に世界遺産登録ができなければ、今後の登録自体が危ぶまれる。今回での確実な登録に向け、取り組みが正念場を迎える。
 (清水柚里)