米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で、埋め立て土砂を搬出する予定の本部港塩川地区を沖縄防衛局が使える見通しが立っていない。政府は本部町と協議を続ける方針だが、台風で壊れた本部港の復旧は年明けになる見通しだ。防衛局は他の港の使用や陸上運搬を検討する可能性もあるが、その場合、県は「知事の変更承認が必要」として、知事権限行使が可能とみる。
防衛局が仲井真弘多元知事から埋め立て承認を受ける際に提出した願書には、本部地区と国頭地区から埋め立て土砂を海上搬送するとしている。うち国頭の港は大型船の接岸に適さないとされ、実質的に使えるのは本部港塩川地区だけだ。本部港が使用できなければ、防衛局にとって早期に土砂を投入する手段が絶たれるのが現状だ。
加えて、辺野古沖までの土砂搬送は全て海上を経由すると明記しており、県は「陸上運搬に切り替えるには県から改めて変更承認を受ける必要がある」と強調する。辺野古新基地建設阻止を掲げる玉城デニー知事がこれを認めない可能性もある。防衛省関係者は「原則は海上搬入なので、本部町や他も含め検討するしかない」と話す。
本部港塩川地区では、今年7月25日から8月3日にかけて埋め立てに用いるとみられる土砂が大型船に積み込まれた。土砂搬出を監視している市民団体「本部町島ぐるみ会議」の集計によると、期間中に積み込まれた土砂は最大で約1万3千トン。辺野古側海域の埋め立てに必要とされる土砂約290万トンの1%に満たない。本部港が使用可能になっても、必要な土砂を辺野古に搬入するにはかなりの時間を要するとみられる。
一方、本部港の使用許可を巡って町が申請を受け付けなかった背景を巡り、県から指導があったと説明した岩屋毅防衛相の発言が波紋を呼んでいる。防衛省関係者は「町とやりとりした記録が残っており『県からの指導』とある」と話し、記録を基にした発言とする。
これに県や町は「県の指導はなかった」と否定している。事実、県が同港を管理するが使用許可の権限は町に移譲されており、指導する立場にない。
(當山幸都、明真南斗、塚崎昇平)