警備隊発足へ作業急ピッチ 宮古島陸自配備 着工1年 強まる「南西シフト」


社会
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陸上自衛隊駐屯地の建設が進む旧千代田カントリークラブ=19日、宮古島市上野野原

 宮古島市の陸上自衛隊配備計画を巡り、昨年11月に市上野野原のゴルフ場跡地で駐屯地の造成工事が始まってから20日で1年となる。現場では本年度末の警備隊発足に向けて隊舎建設などが急ピッチで進み、ならされた土地に徐々に駐屯地の姿が見え始めている。一方、市城辺保良では弾薬庫の整備に向け年度内にも防衛省が用地取得に着手する予定だ。同省が南西諸島で進める陸自配備計画は節目を迎えようとしている。

 宮古島市ではゴルフ場だった「千代田カントリークラブ」跡地(市上野野原、約22ヘクタール」が警備隊の建設予定地に決まり、昨年11月に造成工事が始まった。本年度末に380人規模の「宮古警備隊(仮称)」が発足する予定で、地対艦、地対空ミサイルの各部隊も2019年度以降に順次編成される計画だ。合わせて700~800人規模の部隊となる。

 建設地に隣接する野原部落会や千代田部落会は反対決議を採択していたが、工事が進むにつれ諦めの声が広がり、いずれも決議撤回や事実上容認の立場に転じている。

 一方、防衛省は今年1月、ミサイルを保管する弾薬庫や小銃の射撃訓練場の配置先として市城辺の保良鉱山を選定した。本年度内の用地取得を目指し、19年度予算の概算要求には射撃場建設の関連経費など約42億5100万円を盛り込んでいる。鉱山に隣接する保良部落会や七又部落会は建設に対し反対決議を採択しており、今も集落として反対の意思を示す。ただ、保良では地域活性化を条件に配備に賛同する組織も発足しており、隊員の家族宿舎などの誘致を求める署名を市に提出する動きも出ている。

 南西諸島への陸上自衛隊配備は、10年に改定された「防衛計画の大綱」(防衛大綱)で掲げられた。南西諸島を「自衛隊配備の空白地域」と位置付けるとともに部隊配備の必要性が打ち出され、13年改定の防衛大綱にも引き継がれた。

 「空白」を埋める作業は地元の反発を引き起こしながらも着々と進む。防衛省は16年3月に与那国町に陸自の沿岸監視隊を配備したほか、本年度末には奄美大島にもミサイル部隊など500人規模の陸自部隊が編成される予定だ。作業が遅れていた石垣市でも年度内に陸自駐屯地の着工が見込まれる。

 今月10日、沖縄入りし玉城デニー知事と会談した岩屋毅防衛相は「日本の防衛の最前線はこの南西地域にある」と述べ、抑止力維持の観点から配備を進める必要性を強調した。

 政府は年末までに、新たな防衛大綱と今後5年間に必要な防衛装備品や費用を示す「中期防衛力整備計画」を決定する見通し。南西諸島の防衛力強化に関する新たな強化方針が打ち出されて「南西シフト」が一層鮮明になる可能性もある。 (當山幸都)