透析患者も気軽に旅を! 沖縄県内医療3者連携 台湾から受け入れ整備


この記事を書いた人 琉球新報社
透析液の入った段ボールを前に笑顔を見せる腹膜透析患者の洪谷源さん(前列左から2人目)、潘麗珠さん(同3人目)、(後列左から)デポアイランドの奥原悟専務、城間宇恵代表、謝秋香さん=27日、北谷町のベッセルホテルカンパーナ沖縄

 台湾の透析患者も安心して沖縄へ―。那覇市の「SORAアカデミーサポート」などが、台湾の腹膜透析患者が気軽に旅行に来られるよう、透析液を県内で調達できる仕組みづくりに乗り出している。腹膜透析には1日8リットルほどの透析液を使うが、台湾から持参しなくてはならず、患者の負担が大きい。27日には初めて患者2人の受け入れを調整。利用した患者からは「遠出しづらい透析患者も旅行しやすい」と歓迎の声が上がった。

 「ここまで来るのに相当な時間がかかりました」。「SORA―」の城間宇恵代表(47)は、27日夜、北谷町の「ベッセルホテルカンパーナ沖縄」で、透析液の袋が詰まった段ボールを前に、ほっとした表情を浮かべた。

 日本では人工透析は医療施設などで週に数回行う血液透析が主流だが、腹腔(ふくくう)内に透析液を入れ、一定時間後に入れ替える腹膜透析もある。腹膜透析は透析液を自分で交換する方法で、在宅でもできる。海外の腹膜透析患者が日本を訪れる際は、自ら透析液を持ち込んでいるのが現状だ。

 県が県産業振興公社に委託している「中小企業課題解決プロジェクト推進事業」の一環で、中国語ができる医療従事者の育成をする「SORA―」と、沖縄医療生活協同組合、医薬品総合商社「ダイコー沖縄」の3者が連携。城間代表が調整役を担う。患者は県内の病院で受診し、ダイコー沖縄が透析液を手配した。

 27日、台湾から腹膜透析患者2人と血液透析患者6人、その家族ら計18人が来県。豊見城市のとよみ生協病院で受診し、観光を楽しんだ後、宿泊先ホテルに着いた。ホテル側も透析液の受け取りなど体制を整えていた。この日届いた透析液は2人分で40キロを超える。

 同行する看護師の謝秋香さん(53)は「健常者同様、透析患者も家族と旅行したいと思っている。でもこれだけ運ぶのは体力的につらい」と話す。半年ほど前から透析をしているという洪谷源さん(55)は、初めての海外旅行。洪さんの妻は「病気が判明してから、遠くに行きたくないと落ち込んでいた。こういう支援があるならまた来たい」と笑顔を見せた。

 城間代表によると、台湾は人口比による透析患者が世界有数に多い。「病を抱えても便利に旅行を楽しんでもらえたらと思う。沖縄は健康弱者にも優しいと言われるような取り組みをしていきたい」と意気込んでいる。