「はいたいコラム」 SDGs、隣人を助ける仕事


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 島んちゅのみなさん、はいた~い!人生100年時代。みなさんは何歳まで働きたいですか。先日、島根県の農業法人を訪ねて、考えさせられる出来事がありました。国の方針により定年がこれ以上引き上げられると、地域に戻って営農する人がいなくなるというのです。定年後に戻ると当てにしていた人材が、65歳を過ぎても帰ってこなくなるという課題です。

 ある法人では、集落営農として法人化し、農地集積、規模拡大して大型機械やITで効率のよい農業をしようとしています。しかし結局は、オペレーターが必要です。

 また、中山間地の生産法人では、1台400万円もするデンマーク製の自動草刈りロボットを購入したと、デモを見せてくれました。最大45度の急斜面の畦(あぜ)や法面(のりめん)を、遠隔操作で進んでいく小型カーのような除草ロボに、私ははじめ「画期的!」と声を上げましたが、それにしても高額な投資です。そしてショックだったのは、「田んぼの水管理なら杖(つえ)をついてもできるけれど、草刈りは杖をついてはできない」という言葉でした。もはや、田んぼを守るのは杖をつく老人である。実に的確に現状を表していました。しかも国産の良品がないため外国産を買うしかなく、代理店は遠い他県なので、故障してもすぐに部品が手に入らず、草刈りシーズンが終わってしまうこともあるという話でした。まったく、日本の農機具メーカーは、何をしているのでしょう。なぜ日本の農村課題を解決する商品を開発しないのでしょう。結果、外国にお金が流れているのです。国の事業で開発を進めていますが、実現はまだ2年先です。

 企業でも、個人にも、それぞれ、その会社(人)にしかできない役割、使命があるものです。生まれ故郷が荒廃していく様子を黙って傍観していて、果たして自分の心は嬉しいでしょうか。CSR(企業の社会的責任)とは、本来、そういう責任です。杖をついて田畑を見回るお年寄りは、実は強く、頼もしい存在です。そうした先輩を助けることこそ、その会社(人)らしさの発揮ではないでしょうか。

 地域を耕し、人生に誇りを持つ生涯現役の高齢者が増えれば、医療や介護費の軽減にもつながります。SDGs(持続可能な開発目標)が社会に求められていますが、まずは自分の祖父母を、隣人を手伝うことが第一歩です。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)