〈解説〉週明けにも新基地土砂積み込み 「諦め」ムード 醸成狙う


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土砂搬出が計画される琉球セメントの桟橋。警備のためのプレハブなどが設けられている=1日、名護市安和(小型無人機で撮影)

 名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局が週明けにも土砂搬出の作業を始めるのは、少しでも早く埋め立てに着手したい、前のめりな姿勢の表れだ。約1カ月の集中協議が平行線に終わり、県が来年2月24日の県民投票実施を決めると、政府は今年12月中旬の土砂投入方針を固めた。県民投票に向けて新基地反対の機運が高まることへの警戒が背景にあるとみられる。

 防衛局は本部港から土砂を搬出する計画で町と協議を進めていたが、台風の影響で岸壁が破損したとして申請が受理されなかった。そこで名護市にある民間の桟橋を使う方法を選択した。海から新基地建設現場で資材を揚げる場所は1カ所のみで、現状のまま作業を始めても大量の土砂投入は難しい。それでも早期に着手しようとする姿勢からは、県民の諦めムードを誘いたい思惑も透ける。しかし、むしろ政府の想定に反して県民の反発は高まる可能性が高い。

 県は民間の桟橋を使うとの報道を受け、対抗措置を検討している。防衛局が県に提出した埋め立て申請書の添付資料で、搬出先は「国頭地区」「本部地区」と表記されており、港名は指定されていないが、名護市の桟橋が本部地区に含まれるかどうか精査する。

 一方、防衛局は本部地区という表記が鉱山一帯を指すという認識を示しており、名護市の桟橋を利用するための理屈も用意してきた。県が埋め立て承認を撤回する前に一度、防衛局が本部港で土砂を積み出した際、駆けつけた新基地建設に反対する市民らを機動隊が強制排除した。今回も警備体制が組まれており、政府は同様の展開を予測しているとみられる。

 県との間で埋め立て承認を巡る係争が終わらないまま、当初想定していない搬出方法まで持ち出して工事を強行する姿勢は批判を免れない。

 (明真南斗)