視力失っても諦めず 奥平さん、伴走者と力合わせ NAHAマラソン


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目に障がいを負ってから初めてマラソンに挑戦し、完走した奥平広光さん(中央)。伴走者の新川洋和さん(左)と山城邦彦さん(右)に「2人のおかげ」と感謝した=2日、那覇市の奥武山公園

 沖縄県内外から約2万5千人が出場した2日の第34回NAHAマラソン。初回からの連続出場記録を伸ばす人、同僚と一緒に参加する人、仮装する人などさまざまなランナーの姿があった。それぞれの思いや絆を胸に抱いて、本島南部を駆け抜けた。

 3人で完走、喜びも3倍―。7年ほど前、病気で視力をほとんど失った奥平広光さん(61)=那覇市=は30代の頃、NAHAマラソンで完走した経験があった。「目に障がいがあっても走れるかどうか。25年ぶりに挑戦したい」。伴走者2人に支えられ、制限時間ギリギリでゴール。“相棒”と喜びをかみしめた。

 もともと走るのが好きだった。30代の頃、NAHAマラソンに6回出場し、5回完走。しかしその後は建設関係の仕事に没頭し、出場の機会は無かった。

 50代半ばで目の病気が見つかり退職した。デイサービスに通う中、「またマラソンに挑戦したい」と思うようになったという。沖縄伴走ランナーネットワークに加盟し、8月から新川洋和さん(59)=沖縄市=の伴走で練習を重ねた。

 迎えた本番。新川さんとロープを握り合い、スタートを切った。山城邦彦さん(45)=西原町=もサポートに就いた。「ペースを落としましょう」「滑るので気をつけて」。新川さんが声を掛ける。25キロ付近で右の太ももにけいれんが出た。奥平さんは「リタイアしようと思った」が、新川さんに促され、歩きながら持ち直した。

 6時間1分54秒でゴールした。「おめでとう」「すごいね」。仲間から祝福の握手が続いた。奥平さんは「2人の相棒が最後まで導いてくれた。とてもうれしい」と感謝。「目に障がいがあっても完走できる。来年は6時間を切りたい」と早くも先を見据えた。