宜野湾議会、予算も否決か 県民投票に反対の意見書 市長対応が最大焦点


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
名護市辺野古の埋め立て賛否を問う県民投票に反対する意見書を賛成多数で可決する宜野湾市議会の市議ら=4日午前、同市議会本会議場

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、宜野湾市議会が投票の実施に反対する意見書を可決した。12月定例会中に提出される事務経費を盛り込んだ補正予算案についても「実施に反対して予算案に賛成するのは矛盾がある」(与党市議)との声が多く、否決される可能性が高い。一方、仮に否決された場合でも、首長が再議に付すことや予算を支出する権限がある。県は事務の実施は「義務」として首長に繰り返し実施を求める構えだ。最終的な判断を下す松川正則宜野湾市長の対応が最大の焦点となる。

 今回、県民投票の実施に反対する意見書は保守系の与党会派12人と公明党3人の計15人が賛成した。過半数に最低必要な13人に達するかを巡り、動向が注目される公明党の市議の一人は「県民投票の実施自体には反対はしないが、二者択一では民意を十分に反映できない。(補正予算案の審議でも)ぶれないと思う」と語り、反対する意向を示した。補正予算案に対する各会派内の議論はこれからだが、賛成少数で否決される可能性は高い。

▽不透明な対応

 補正予算案が否決された場合、最終的に宜野湾市民が投票できるかどうかの鍵を握る松川市長の判断に関しては、現時点では不透明だ。松川市長は4日、記者団に「法にのっとって取り組んでいく」と話しながらも、予算が否決された場合は「否決された段階で検討する」とけむに巻いた。
 一方、野党市議の一人は、投票が実施できなくなった場合に市民が市を相手に訴訟を起こす可能性に言及した上で「事務を拒否すれば市民の反発はもっと強くなる。事務をやらないという選択を市長ができるのか」と事務の拒否に懐疑的な見方を示した。

▽「議会は議会」

 県の県民投票推進課、渡嘉敷道夫課長は「市議会での審議がどうなるか予断を持って言えない」と慎重に審議を見守る考えを示した。謝花喜一郎副知事は記者らに全市町村実施は難しい見通しかと聞かれ「石垣でも(反対の意見書は)出ているし、議会は議会の意思として、それはそれだ」と否定した。「市町村はそれぞれ義務を負っている。われわれは協力していただけるよう誠意を持って説明するに尽きる」と述べ、法律に基づく義務だと強調した。
 県は、仮に市議会で予算案が否決された場合でも地方自治法177条が適用されるとする。県民投票の事務にかかる経費は「義務費」であり、否決されても市町村長が再議に付した上で支出することができるという考えだ。
 もともと県民投票事務の移譲を巡っては、うるま、糸満、宜野湾、石垣の4市が保留していたが、池田竹州知事公室長ら県幹部が直接足を運び、協力を求めてきた。4市では一時、市議会への補正予算案の提出も危ぶまれていたが、糸満を除く3市は12月議会に提案する見通しとなった。県幹部の一人は「議会に提案するのだから『保留』という言い方はもうできないのでは」と話し、市町村長が義務を果たすだろうと期待を示した。 (長嶺真輝、中村万里子)