[ココロ・カラダ不思議つながり]63 修学旅行のお風呂、どうすればいい?


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Q.修学旅行のお風呂、どうすればいい?

 

今日の質問は、
「この間の連載を読んで、沖縄でも同じ学年に自分のことを男だと思う人がいるんだなと思いました。
来年は修学旅行があるから、みんなと一緒にお風呂とか絶対無理です。先生や学年のみんなに言わなければと思うけど、『カミングアウトして大切な友だちに受け入れてもらえなかったら…』と不安で言い出せません。
この前の連載の人って強いな。いつもウソをついている自分は弱いのかな、と悩んでいます。」です。
中学2年生からです。

 

A.カミングアウト、自分で決めていい

 

あなたは弱くないよ。大切な自分を守れているんだよ。それから、沖縄の中学にも同じように、身体と心の性別の違和感で悩んでいる人はいます。私も沖縄県内で実際にたくさん出会っています。あなたは1人ではありません。

危険伴う 慎重に進めて

当事者の人が不安になったり、悩んだり、辛い思いをしているのは、周りの人の知識不足や理解の無さの問題です。当事者が悪いというわけではないけれど、性別って、学校のあらゆるところに関わってきて小さなウソをつき続ける必要があるので、エネルギーも使うし申し訳ない気持ちにもなるよね。

自分にとっては異性がトイレを使うのを見るのも、また、自分が使うのを見られるのも気恥ずかしい気持ちになるしね。そこまでは我慢できても、修学旅行のお風呂は耐えられないって気持ちは当然です。

ただ、カミングアウトにはさまざまな危険が伴うので、慎重に進めてください。

まず、修学旅行を乗り切るために、学年全員にカミングアウトする必要はありません。

例えば、実際にうまくいったと教えてもらった方法です。

当日は、お風呂の前の時間になったら具合が悪くなったことにして、「先生のところに行くわ」と友達に伝える。その後、部屋のみんなには先生から「熱っぽいから別室で寝ます」と伝えてもらう。

お風呂も個室か、最後に1人で入るようにして、朝になったら「夜のおしゃべりできなくて残念だったけど、ぐっすり寝たら治った」とまた友達と一緒に楽しむ。

夜になったら「やっぱり具合が悪くなった」とまた、別室で寝かせてもらう。先生も、担任と保健室の先生など数人に話すだけで対応してもらえます。

性の多様性 授業してもらう

どうしても学年のみんなに言いたいときは、性の多様性について全学年の各クラスで担任から授業をしてもらいます。さらに、できればあなたと同じセクシュアリティの人に講演に来てもらい、保護者も含めて全校生徒で聴きます。

これは正しい知識をみんなに持ってもらうだけではなく、聞いている態度を観察して、カミングアウトしても安全かどうか確かめるためです。同じ学年はOKでも、他学年から嫌なことを言われて学校に行きづらくなることもあります。

プレビュー

カミングアウトするもしないも自分で決めてOKです。黙っているのは、弱いとか友だちに不誠実とは違います。自分を守って良いのです。

文部科学省から、「多様な性を生きる子どもに配慮しなさい」という通知が学校に届いています。でも、学校によっては不慣れな場合もあるので、イラストの専門のところに相談しながら進めていってね。

那覇では中学生も参加できるレインボー交流会が毎月あります。さまざまな出会いがあって、情報や元気をいっぱいもらえますよ。

徳永桂子(とくなが・けいこ) 思春期保健相談士。

 心が生きると書く「性」、心が生きて交わる・お互いの心を生かして交わると書く「性交」の漢字の通り、子どもたちがありのままの自分を肯定できるように。豊かなパートナーシップを築けるように。みんなで明るく肯定的に性について語れたらいいなと思って活動中。

 新報小中学生新聞に「ココロ・カラダ不思議つながり」を連載中。著書に「からだノート~中学生の相談箱」(単著)「LGBTなんでも聞いてみよう~中・高生が知りたいホントのところ」(共著)など。
 

~ この連載が本になりました ~

ココロ・カラダ不思議つながり

 
徳永桂子・著/上原明子・イラスト
A5変型判 128頁(オールカラー)

¥1,250(税抜き)