「これだけ民意をないがしろにできてしまう国は一体何なのか。この国の在り方が問われている」。8月に死去した翁長雄志前知事の妻・樹子さん(63)は14日、名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前を訪れ、土砂投入を強行した政府に憤りをあらわにした。
玉城デニー知事が基地建設阻止に向け動く中で、辺野古へ足を運ぶことにはためらいがあったという。「デニーさんが頑張っている時に、翁長の名前が重なるのは申し訳ない」と直前まで来るつもりはなかった。しかし、未来の子どものために抗議への参加を呼び掛けた新聞の投書を読み、迷った末に「こんな日に行かなければ、一生後悔する」と駆け付けた。
一人の県民として、政府への強い怒りと同時に、当事者意識の薄い本土への疑問を持つ。「翁長が県民の父であろうとしたように、政府は全国民の親でなくてはならない。こんなにも軽んじられる状況は一体何なのか」と怒り、「沖縄でだけ民意を軽んじることが許されるのはおかしいと思わないか」と報道陣に逆に質問する場面もあった。
「翁長はそばにいてくれていると思う。『(基地建設を)止める最後の最後は現場だ』と言っていた。県民の心をへし折ることはできない。チルダイ(虚脱)してもまた立ち上がる強さを、県民は持っている」ときっぱりと言い切った。