「生まれたばかりの頃は抱っこもできなかった…」 複数の手術、7つの心疾患乗り越え笑顔の輪 糸満市の阿佐慶陽ちゃん


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複数の心疾患を合併しながらも手術を受けて回復。医師ら医療スタッフに元気な姿を見せる阿佐慶陽ちゃん(中央)=12月16日、南風原町の県立南部医療センター・こども医療センター

 生まれつき心拍数が低く、上げる力もない「先天性完全房室ブロック」など複数の心疾患を合併しているために全身に血液がうまく巡らず、命の危機にあった女児が沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで手術を受け、順調に回復している。女児は生後約5カ月の阿佐慶陽(ひなた)ちゃん=糸満市。10月中旬に退院し自宅で療養中だが16日、母親の歩(あゆみ)さん(39)ら家族とともにこども医療センターを訪ね、医師らスタッフに元気な姿を見せた。

 手術を担当した小児心臓血管外科部長の西岡雅彦医師によると、陽ちゃんは「総肺静脈環流異常」「心室中隔欠損」など7つの心疾患を合併している。心臓の位置も特殊なため気管が圧迫され、呼吸不全が急速に進んでいた。新生児科や小児心臓外科など5科の医療スタッフが治療に当たり、命を救った。同センターでは年間120~140件、小児の心疾患手術を実施している。宮城雅也母子センター長は「開院から12年の積み重ねでスタッフの連携が良くなっている」と話した。

 陽ちゃんは胎児のころに心臓の異常が見つかった。7月11日に生まれてすぐに心臓を動かすペースメーカーを取り付ける手術を受けた。体重の増加を待ち生後1カ月で、心室の穴を閉じたり、心臓内の血液の流れを正常にしたりする手術、気管を圧迫していた血管を切って圧迫をなくす手術を同時に受けた。

 母親の歩さんは「生まれたばかりのころはNICU(新生児集中治療室)で寝てばかりで、抱っこもできずこの先どうなるのか不安だった」と胸の内を明かした。西岡医師は「各専門科の知識と医療技術が向上し、赤ちゃんが元気な状態になるまで助けられる環境になっている」と治療を振り返った。

 陽ちゃんは7人きょうだの末っ子で6女。現在は2週間に一度通院している。16日は生後百日を記念する写真を撮影した。父親の亮さん(39)は「先生方には感謝の言葉しかない」と話し、陽ちゃんの顔をのぞき込みながら「とてもよく笑う子。上のお姉ちゃんたちも楽しそうに遊んでくれる。家族がますますにぎやかになった」とほほ笑んだ。
 (高江洲洋子)