社会

元患者家族ら訴訟 結審 ハンセン病 判決は来年5月

 【熊本で謝花史哲】国が長年続けたハンセン病強制隔離政策で、患者本人だけでなく家族も深刻な偏見や差別を受けたとして元患者の家族で県内在住の約240人を含む561人が国に謝罪と損害賠償を求めた訴訟は21日、熊本地裁(遠藤浩太郎裁判長)で結審した。家族側と国側の双方が最終弁論した。判決は来年5月31日。

 この日法廷では鹿児島県出身の原告3人が意見陳述し、被害の実態を訴えた。弁護団からも弁護士3人が陳述した。

 家族側はハンセン病に対する偏見差別が生まれた根本的な要因として国が隔離政策でハンセン病が恐ろしい伝染病と言い触らし国民の恐怖心をあおったことにあると指摘した。家族も元患者のように消毒の対象となるなど「家族への偏見差別が作出された」と主張。元患者や家族に対する差別意識は「強固な社会通念として定着し、世代を超えて存在し続けている」と訴えた。

 原告らは国が隔離政策を転換し、差別を解消する取り組みを怠ったため、偏見差別の被害や家族関係の形成を阻害されるという共通被害を受けたと指摘した。

 国側は、隔離政策は家族を対象にしていないため、家族への偏見差別を助長していないと反論。隔離政策の根拠となった「らい予防法」が1996年に廃止された際に国が謝罪し政策転換を図ったなどとして、被害回復を図る義務を果たしていると主張した。その後も施策を講じたことで、「隔離政策がハンセン病への誤った認識を与えた影響は社会通念上、無視し得る程度まで除去された」とし、国が家族の被害回復を図る義務はないと指摘した。原告の共通被害も認められないとした。

<用語>ハンセン病隔離政策
 ハンセン病は抗酸菌の一種であるらい菌の感染で、菌に抵抗力のない人がまれに発病する慢性感染性疾患。感染力は弱く治療できる病気だが、誤った病気の認識が偏見や差別を助長し、国内では「らい予防法」の下で患者を隔離する政策によって人権侵害が深刻化した。1996年にらい予防法は廃止されたが、元患者が被害回復を求め提訴。2001年の熊本地裁判決は隔離政策を違憲と認定し、国は責任を認め謝罪。元患者の家族も同様に偏見差別に苦しんでいるとして16年2月に提訴した。