1961年に開店した新城商店=沖縄県那覇市樋川=が年内で店を閉める。台所用品を中心に扱う雑貨店で、地域の人々に長く愛されてきた。店じまいを知った常連客からは「さみしい」「残念だ」との声が聞かれた。店主の新城美枝子さん(81)は「人との付き合いが好きで、続けてこられた。みんなに感謝する」と笑顔を見せた。
国頭村出身の美枝子さんが夫・洋一郎さん(79)と共に那覇に出てきたのは25歳のころ。義父の孝五郎さんが、樋川で台所用品を販売していた店を買い取って引き継いだのが始まりだった。新城商店が店を構える与儀市場通りは60~70年代初め、人通りも多くにぎわっていたという。
「仕事が忙しくて満足に子育てができなかった」と語る美枝子さん。子どもをおんぶしながら店を切り盛りした。娘の安里郁子さん(51)は、23歳のころから従業員として店で働く。美枝子さんについて「ゆんたくしに買い物に来る人もたくさんいた」と振り返る。
日本復帰後、スーパーやホームセンターが増えたことで、与儀市場通りからにぎわいが少しずつ減っていった。5年前、美枝子さんは店を畳むことを決意したものの、息子の博邦さん(56)の説得で踏みとどまった。しかし、昨年足の関節を手術してからは、肉体的に営業を続けることが難しくなったという。
新城商店の向かいにある奥間青果の従業員、末吉秀安さん(63)は「なんでもそろう店だった」と閉店を惜しむ。開店当時からの常連客、奥間朝順さん(66)も「ほかのお店より商品が安かったのに」と残念がった。閉店について美枝子さんは「長い間、お世話になった。思い残すことは何もない」と語る。今後は手話ダンスやレッグ体操など、趣味を満喫することを楽しみにしているという。(砂川博範)