今年6月に発生した流弾事故で、米軍がキャンプ・シュワブのレンジ10で実弾射撃訓練再開を通知したことについて名護市の渡具知武豊市長や数久田区の比嘉幹和区長は28日、「納得できない」「改善されていない」と強い口調で批判した。米軍は「(発見された銃弾と同じ)50口径弾による実弾射撃訓練は実施しない」としているが、訓練の日時や内容など詳細を明らかにしていない。米軍から受けた「演習通報」を沖縄県や市に伝える沖縄防衛局も実態を把握しておらず、県や市の要望は置き去りになったままだ。
「沖縄防衛局や米軍に対し強く抗議し要請しているが改善されない。われわれの意が届いていない。遺憾だ」。訓練再開を受けて渡具知市長は強い口調で語った。市と区は20日と21日に沖縄防衛局に対し、地域住民へ事前説明することなくレンジ10での実弾射撃訓練が再開しないよう求めたばかり。数久田区では、米軍や防衛局からの事前通知もなかった。
報道で訓練再開を知った比嘉区長は「弾は違ったとしても、実弾訓練なのだから到底納得できない」と強く非難した。「また誤って飛んで来るかもしれない。安全対策をしないうちに実弾訓練を再開したら安心することはできない。同じようなことを繰り返して、米軍が何を考えてるか分からない」と不信感をあらわにした。
名護市で基地問題を担当する総務課の神元愛主幹は「演習通報はいつからいつまでの期間で0時から24時までと書かれているだけで、いつどこで何が行われているかという実態は分からない」と指摘した。
今回の米軍の演習通報は「12月24日~30日 0時~24時」という表記で沖縄防衛局を通じて県と市に届いた。具体的な日時や訓練内容は記されていない。
防衛局は本紙の取材に対し「レンジ10における射撃訓練の詳細については承知していない」と答え、レンジ10でどのような訓練が実施されているのかを確かめることはできない。
県基地対策課の担当者は「実際に訓練しているのかどうかも分からない。さらに踏み込んだ対応をするには、実態を確認しなければならない」と語った。同課は年明け以降にレンジ10への立ち入りを米軍に求める意向だ。
名護市内では過去に6件の流弾事故が起きており、うち5件はレンジ10から発射された。地元の要望に応えず、安全対策が施されない状況が続いている。 (阪口彩子、明真南斗)