マティス氏辞任 歯止め役去り安保転換か 米軍駐留費 日本負担増の可能性


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 12月の米首都ワシントンは相変わらず、いや、これまで以上の混乱が続いた。トランプ大統領は19日、内戦が続くシリアから米軍を完全撤収させることを決定。その翌日には、トランプ氏の方針に反対するマティス国防長官が辞任することが決まった。

 米政治・経済の不透明性などを背景に株価は乱高下。トランプ氏が固執するメキシコ国境との「壁」建設費用を巡る対立で予算が成立せず、一部政府機関の閉鎖が続いたまま、新年を迎えそうだ。ある意味、トランプ氏を象徴する年の瀬だともいえる。

 注目したいのは、移民問題や貿易、中東からの米軍撤退といったトランプ氏の公約への原点回帰が、大統領の「歯止め役」といわれたマティス氏の退任後、軍事、安全保障にどう影響するかだ。ビジネス界出身で「お金」に敏感なトランプ氏は常に、費用対効果や米軍の海外駐留に対する経費負担に不満を募らせている。

 26日にイラクを電撃訪問したトランプ氏はシリア撤収の正当性を強調し、「米国は世界の警察官を続けることはできない」と語った。多額の戦費を投じながら終結が見通せず、米史上最長の戦争となったアフガニスタンからの大規模撤退を計画しているという報道もある。どちらもマティス氏がこれまで撤退に「待った」を掛けてきたものだ。

 米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏は27日の記事でトランプ氏は最近、外交政策に関してランド・ポール上院議員の声に耳を傾けているようだと指摘した。

 ポール氏は、小さな政府を追求し他国への軍事介入を嫌うリバタリアン(自由至上主義者)で、中東などへの米軍の介入を批判してきた共和党保守派。海外にある米軍基地の大幅縮小を求める立場も示してきた。トランプ氏とは「ゴルフ仲間」のようだ。

 2013年に引退した父ロン・ポール元下院議員も、オバマ前政権下、財政赤字などを理由に在日米軍を含む在外米軍基地の撤収を主張。民主党のデニス・クシニッチ、バーニー・フランク両下院議員(当時)も賛同し、在沖海兵隊の不要論が広がったが、日本の駐留経費負担の実情を聞いて沈黙したといわれる。

 同盟重視を貫いてきたマティス氏の退任後、「世界の警察官」を辞めたいトランプ氏がアジアや欧州でも在外米軍の撤退・規模縮小や、同盟国の経費負担増を改めて主張し出す可能性は十分ある。

 トランプ氏の対日貿易赤字への強い不満に対し、安倍政権は多額な米国製の軍事装備品購入などで機嫌を取ってきた一方、名護市辺野古の新基地建設計画を強行している。完成までに長い時間と多額の費用を要する基地建設の傍ら、既に7割を超える米軍駐留経費の日本側負担増をトランプ氏が求めたら、政府はどう対応するつもりなのだろう。