齋藤孝さんに聞く 12日開催「新報文化講演会」講師


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 「読書力」などの著者で明治大学文学部教授の齋藤孝さんが、12日に琉球新報ホールで開催される新報文化講演会2019の講師として来県する。講演会を前に「新しい学力」の意味や教育への新聞活用、沖縄へのメッセージなどを聞いた。(聞き手・松元剛)

さいとう・たかし 明治大文学部教授。1960年静岡県生まれ。85年東京大法学部卒。東京大大学院教育学研究科博士課程を経て現職。「教育力」「読書力」「声に出して読みたい日本語」など著書多数。

―学習指導要領改訂に伴う「新しい学力」についての見解を。

 「自分から積極的に学ぶ主体性、人と対話しながら考えを深め、アイデアを出していく。単に議論するのではなく、探究心をもって深く学んでいく。そういう意欲のある学び方そのものを育てていく」

 「実際に仕事をしてみると、チームで仕事をし、課題を見つけて問題を解決する力が求められる。これが新しい学力ではないか。学校や家庭で対話しながら、どこが問題なのか、どうすれば解決するんだろう、そうした問題発見型あるいは問題解決型の思考力を育てていくことが求められる」

―著書で分析されている「思考力」「雑談力」などがなぜ必要なのか。

 「一人一人が思考力を持ち、課題意識を持って、当事者として取り組む。当事者意識はやりがいにつながり、組織の成功にもつながる。スポーツならチームが勝つために自分に何ができるか考え、皆で話し合い、工夫する。これを学問でもやろうということだ。考えないでやるところに進歩はない。コーチにどうすればこの球を打てるようになるかなど、質問力があることによって自分の課題に対してクリアな意識で臨むことができる」

 「コミュニケーション力を大きく分けると、一つは人間関係を温める雑談力、意味をきちんとやり取りできる力、もう一つは新しいアイデアを生むクリエーティブな会話力。この三つができると人間関係もでき、きちんと情報のやり取りもできて、アイデアも生まれる。これを学校、家庭で意識してやってほしい」

―こうした素養を培い、人生を豊かにする活字文化に触れる意義とは。

 「思考力というのは言葉の力だ。考える、他の人とコミュニケーションをするという一番大事なことが言葉を通じて行われる。語彙(ごい)力は活字に触れていないと増えない。毎日、新聞や本を読んでいると、どんどん語彙が増えていく。語彙力があることは思考力、コミュニケーション力にとって決定的なことだ」

 「実用的に使う日本語を学ぶには新聞が一番いいテキストだ。新聞に書かれたことを自分の言葉で説明し直すことができれば、日本語力があることになる。新聞を中心とした学習活動が社会生活をしていく上での総合力を鍛えてくれる。なぜ新聞を強調するかというと、もう一つ理由がある。18歳に選挙権が引き下げられ、高校生が投票できる。普通の高校生が新聞を全く読まない状態で投票に行くことに意味があるのか。新聞を読むのは、社会的常識を持った上で、投票という権利を行使する自覚を持つ準備だ」

―沖縄へメッセージを。

 「沖縄の人が持っている人間の温かみ、これをどんどん育てていって、この社会は温かい社会なんだ、人間というのはみんなでやっていくのが楽しいんだという沖縄の空気を日本全体に広げ、日本全体を温めたい。沖縄から新聞活用を通した学力向上の結果が出てくると教育のモデル地域になる。『新しい学力』に向けて、リーダーになっていくことを期待している」

http://bit.ly/2019takashisaito

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 齋藤孝さんを講師に迎える新報文化講演会2019「新しい学力とコミュニケーション力」を12日午前11時(開場午前10時15分)、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催します。入場無料ですが、聴講券の予約が必要です。申し込み・問い合わせは7~10日午前10時~午後5時。定員に達し次第締め切ります。琉球新報読者事業局(電話)098(865)5253。