差別サイトから消えた広告 企業の取り下げ広がる <沖縄フェイクを追う>⑫~まとめサイト❺


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有料広告が次々と消えた現状を報告する保守速報の「お知らせ」とサイトで販売を始めたしおり購入の協力を求める「お知らせ」

 インターネット上の匿名掲示板などから投稿を集め、差別をあおる記事をネット上で拡散していたまとめサイト「保守速報」から企業のホームページなどに誘導する有料広告(バナー広告)が次々と消えた。2018年6月ごろからで、保守速報から攻撃を受けていた李信恵(りしね)さん(47)が訴えた裁判の大阪高裁判決を目前に控えていた。

 まとめサイトなどで収入を得ている運営者は、サイトの閲覧数などに応じて広告収入が入る仕組みを導入している。読者の関心が高い記事を投稿し、閲覧数が増加すれば収入も増える。

 昨年春までは多くの企業広告が掲載されていた保守速報には現在、有料広告がほとんど見当たらない。次々と広告企業が撤退したためだ。きっかけは一つのメール発信だった。保守速報の記事内容に疑問を感じた人が昨年6月、広告主の企業に「差別をあおるサイトに広告を載せていいのか」との趣旨のメールを送ったのだ。送り先は大企業だった。

 ネット広告の掲載までには広告主と掲載サイトの間に複数の企業が関わり、広告主が広告の掲載先を把握できていないことがある。メールを受けた企業はすぐに広告を取り下げた。この件がネットで広まると、同様な通報を広告主の企業などに行う動きが広がった。

 差別をあおるサイトへの広告業界の対応も始まっている。取材班はネット広告に関わる企業271社が加盟する日本インタラクティブ広告協会(JIAA)に対し、差別をあおるサイトへの広告掲載への見解を尋ねた。JIAAは「個別の見解を申し上げることは難しい」とした上で、「ヘイトスピーチなどの差別や人権侵害をしているサイト等は広告掲載先として不適切」との見解を示した。JIAAは加盟社にこうしたサイトに広告を掲載しないよう努めるべきだとする声明を17年12月に出している。声明に準じた指針を今春までに策定・公表する考えだ。

 有料広告が消え収入源を失った保守速報は18年7月、サイトに「広告がない状態で運営しております。このままだと存続が危うい状態です」とした記事を掲載した。その後、保守速報を支援する動きを受け、同年9月からサイト上でしおりを販売し、その収益でサイトの運営を続けている。

 李さんが保守速報を訴えた裁判は最高裁まで争われた。裁判所はネット上の匿名掲示板から攻撃する短文を抜き出し記事をつくった保守速報の法的責任を認め、損害賠償200万円の支払いを命じた。李さんの勝訴が確定した。

 ジャーナリストの津田大介さんは判決を「大きな節目になる」と評価し、「この判例を利用して、悪質なサイトに対して被害を受けている側が訴訟を起こす。悪質なサイトに掲載された広告主に問い合わせる。この2点を地道にやることが重要だ」と指摘した。
 (ファクトチェック取材班・安富智希)