米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に伴う新基地建設に向けた埋め立ての賛否を問う県民投票の事務予算案を県内の一部市議会が否決したことについて、宮崎政久衆院議員(自民、九州比例)は16日、那覇市内で会見し、市町村議員に「反対するよう説いて回ったことはない」と述べ、働き掛けを否定した。議員に予算案否決を呼び掛けている宮崎氏作成の資料について「取り得る手段を答えたにすぎず、報道されたような指南をした事実はない」と説明した。
自民党県連や地方議会議員から依頼を受け、昨年11~12月に地方議会議員との勉強会に4回出席したと明かした上で、各議会の否決や首長の不実施表明は「それぞれの判断」との見解を示し、自身の説明による影響や圧力はないと強調した。
配布資料は県民投票条例の問題点や投票実施への対抗策などを問われ疑問に答える趣旨で作成したと説明。「議会として予算案を否決することに全力を尽くすべきだ」などと明記したことは「知事に(選択肢を)再考させるにはこれしかないと思った」と理由を述べた。
一方、首長が投票事務を義務と判断しながらも予算執行を拒否することの違法性について聞いた本紙の取材に対しては「断言できない」としつつも法的責任を負うリスクは「当然にある」と述べた。
会見は県連の役員らも同席した。照屋守之会長は県民投票について「多様な民意がある。的確に反映しなければならない」と選択肢を多様にする必要性を強調した。一方で「法的拘束力はない」とも述べ、県民投票自体を疑問視した。
与野党の対立激化
辺野古新基地の是非を問う県民投票を巡り、自民党の宮崎政久衆院議員(九州比例)が勉強会で市町村議員に配布した資料が波紋を広げている。16日、資料が明るみとなって以降、初めて公の場に登場した宮崎氏は資料作成の経緯や地方議員への圧力を否定し潔白を訴えた。同席した照屋守之自民県連会長も宮崎氏と同様の認識を示した。事態沈静化に向けて自民側が強気な態度を示す中、県政与党は反発を強めており、県民投票を巡る与野党の対立は激しさを増している。
「地方議員は県議や国会議員の子分じゃない」。16日、県連会館で行われた記者会見には、県連幹部のほか党所属の市町村議員も駆け付け、宮崎氏からの圧力を否定するなど、“指南書”報道に対する怒りをぶちまけた。県連幹部は今回の事態について「資料の一部に過激な文言があったが何も問題ない。勉強会を求めたのは地方議員側であり、勉強会そのものを否定することは地方議員を否定することにつながる」と余裕を見せる。
自民県連は、新聞報道で一連の事態が発覚して以降、対応を協議した。報道した新聞社への抗議も検討したが、最終的には宮崎氏本人と県連幹部がそろって会見に臨んだ。会見では、報道内容に何度も言及するなど報道機関を批判した。
一方、県政与党は今回の事態を「地方議会への圧力」と問題視し、批判を強めている。衆院選で宮崎氏と争った照屋寛徳衆院議員(社民)は「ウチナーのことを全く考えていない政権に忖度(そんたく)し、政府が出す毒まんじゅうを平気で食べる行為で、許してはいけない」と厳しく批判した。別の幹部は「県民投票に反対する五つの市や予算案を否決した議会の反対理由が全て宮崎氏の資料と同じ内容になっている。宮崎氏の行動が地方議会に影響を与えているのは明白だ」と指摘した。