野村ホールディングスと米国の投資ファンドによるオリオンビール買収検討との報道が出た18日夜、那覇市内の居酒屋ではいつもと変わらず、オリオンビールでのどを潤す酔客らの姿が見られた。「買収って何?」「オリオンの名前も変わるの?」などと声が上がった。
寄川ゆかりさん(53)=同市=は「県内企業として親しみを持ってきた。(買収は)さみしい感じもする」と話した。一方、東新川長詳さん(71)=同市=は「長年オリオンを飲んできた。沖縄が誇れるビールとして、世界に進出するのはうれしい」と、今後の発展に期待した。
ビール工場のある名護市では「名護への愛情を変わらず持ってほしい」と求める声や「地域イベントなど地元目線がなくなるのでは」と不安視する声が上がった。オリオンビール創業者の一人、森川豊さん(89)は「ビールの売り上げが落ちていく中で、株主に現経営陣への不安があったのではないか」と話した。「27歳の時に仲間5人で始めて、県民のビールとして育ててもらった。買収となれば残念でしかない」と語った。
名護市では、オリオンビールは夏祭りやクリスマスイベントの中心的存在だ。夏には名護市営市場でビアガーデンが行われており、市営市場を運営する資源活用管理協会の池間學理事長(68)は「名護に限らず沖縄を代表する企業で、地域振興に非常に貢献している。従来通り地域を一緒に盛り上げていけるかが、少し心配」と語った。名護で居酒屋を経営し、昨秋発売された名護限定の75ビール立ち上げに携わった神谷康弘さん(46)は「沖縄に根付いた企業なので、企業として強くなる一方で、今までと変わらぬ愛情で地域を支えてほしい」と求めた。