「寂しい」「前向きに受け止めたい」。野村ホールディングス(HD)と米投資ファンドによるオリオンビール買収が発表された23日、沖縄県内の愛飲家や業界関係者は、さまざまな反応を示した。残念がる声が上がる一方、地元ビールの市場拡大に期待する声もあった。
本島中部の酒類卸売業者社長は、報道で初めて知った買収の話に戸惑いをみせる。地元ビールメーカーのビールだから飲んでいる人が多いと言い「県民からの人気が落ちないか心配」と不安を口にした。
一方で「決まったことだからやむを得ない」とも語り「決断した以上、企業価値が上がっていくような経営をしてほしい」と期待を込めた。
那覇市久茂地にある「酒の富士商店」の仲村悦子店長は、買収を肯定的に捉える。「オリオンビールの名前が海外にも広く知られるようになり、買い求めるお客さんが増えれば、それに越したことはない」と評価した。
那覇市内でスーパーを営む上原貞二さん(63)は「平成元年の開業以来、店でオリオンビールを扱っているが、店の商品は時代に合わせて変わってきている」と強調。沖縄産の商品が店から減っている現状に「平成最後にビールもかぁ」と時代の流れを感じている様子だった。
地元客らでいつもにぎわっている那覇市の居酒屋。「地元のビールだからこそ応援してきた。寂しい」と話す店主の喜屋武満さん(53)に対して、「実感湧かない、ワッター自慢がなくなるのか?」とお客さんが応える一幕もあった。
「絶対撤退しないで」/地元名護、市民ら不安も
【名護】オリオンビール工場のある名護市では「名護=オリオンビール」の認識が強く、名護市民にとって身近な存在だ。今回の買収に、市民らは複雑な心境を抱いている。
名護青年会議所などで組織する「名護PRプロジェクト」のメンバー、宮城泉さん(45)は「販路拡大につながるのでは」と期待する一方、「地元がないがしろになるのかも」という不安も抱く。「身近なオリオンビールが無くなったら困る。地元から絶対に撤退しないでほしい」と強く求めた。
名護十字路商店連合会会長の上地安郎さん(46)は「地場産業でなくなるのはさみしいが、世界のオリオンになってくれたら」と期待する。オリオンビールは「75(なご)ビール」を地元と共同で開発・販売するなど、名護の地域おこしに貢献してきた。「経営形態が変わっても、名護のために協力してもらえるようお願いしたい」と話した。
<識者談話>生き残りの指標に/新城和博氏(ボーダーインク編集者)
戦後沖縄を代表する地場産業のオリオンビールが、外資の投資の対象になるというのは予想していなかった。沖縄の食材や泡盛と同様に沖縄ならではの存在が、今後グローバル社会の中で外資が入ってきた場合どう生き残るのか、一つの指標になるのではないか。また県産品とは何かを考えるきっかけにもなる。
今後どうなるかは分からないが、沖縄の文化に貢献する姿勢は持ち続けてほしい。“三つ星”がどの方向に行くのか興味深い。
個人的には「オリオンいちばん桜」とヒラミ8(エイト)を混ぜ合わせて飲むビールカクテルがお薦め。BEGINが今年も高らかに「おじー自慢のオリオンビール」の曲を歌えるのか、注目したい。