どんな働き方がブラックバイト? 知念高校、実体験から権利学ぶ


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母校を訪れた沖縄キリスト教学院大の学生らと一緒にブラックバイトについて考える知念高校の生徒ら=17日、与那原町の同高

 社会参加する力を育む授業を紹介する琉球新報と沖縄キリスト教学院大の共同企画「沖縄から育む市民力」。今月は「知識を行動に移せる力」を目指す知念高校社会科の譜久山ゆかり教諭の高校大学接続の取り組みを紹介する。県内では、高校生段階で過酷なアルバイトを経験する若者も多い。「ブラックバイト」について学びを深めたキリ学大の学生を招き、大学生の実態や、自ら行動を起こすことで改善した例を伝えてもらった。

 譜久山教諭は、社会の出来事を自分ごととして考え、仲間と話し合いながら意思決定していく力の育成を考え続けてきた。「机上の知識だけでは、何かあっても対応できない」と、防災の方法を巡って対立する地域の問題について異なる立場から意見を交わすといった授業に力を入れる。

 今回は昨年末、キリ学大で学生が自分たちのアルバイト経験を話し合い、何が「ブラック」なのか、どう解決すればいいのかを寸劇を通して考えた授業を見学した。「寸劇で疑似体験しておくと、現実でも動ける」と感じ「この学びを先輩から高校生に伝えてほしい」と大学側に依頼。大学の授業を高校に“出前”する同大の「高校生の学び応援プログラム」を活用して今回の授業が実現した。

 キリ学大からは英語コミュニケーション学科3年で知念高出身の大城加奈さん、与那嶺侑大さん、豊見城高出身の安里吏央さんが同高に出向いた。3年生29人を前に、3人はまず、飲食店で客に水をこぼしてしまったバイト生が店の裏で激しく叱られ、殴られる寸劇を演じた。「本当にあった話」という大城さんの説明に生徒の間に緊張感が走った。

 どんな働き方が「ブラック」か、どんな職種で起こりやすいか、説明を聞いた後、生徒たちは班に分かれ、自分たちの経験を基に寸劇を作った。授業前の打ち合わせで出た「体験が少なくて話し合いが進まないかも」との懸念は無用だった。「13時間連続勤務で休憩5分」「ガソリンスタンドを自分1人に任された」など過酷な体験が続々と出た。

 宮平怜さん(18)の班は飲食店でのサービス残業を演じた。昼間の忙しい時間帯に上司から「もう時間だよね」とタイムカードを押すよう求める電話が入る。後任は来ず、混み合う店内で帰るに帰れない。憤りながら無償で働き続ける様子を、思いの丈を吐き出すように熱演する宮平さんに、教室は熱く盛り上がった。

 他班からは「直接の上司に言って改善されなかったら、もっと上の人に言う」「自分では言えないので先輩に言ってもらう」など「自分にできる解決策」も出た。当初「どうしようもない」と諦め口調だった宮平さんも、授業後は「言うべきことはしっかり言おうと思う」と変化した。

 授業は集中した空気が途切れず、熱心にメモを取る姿が目立った。小橋川優月さん(18)は「事前に現場を見に行くなどして、ブラックかどうか確認したい」、牧志佳南さん(18)は「『辞めるなら友達を連れてこい』と言われることもブラックなんだと分かった。感謝します」とそれぞれに手応えを語った。「学生は弱い立場だが自分の意見をしっかり持ちたい」(真栄平有里さん)、「自分たちの権利を知った」(高嶺彩世さん、城間凜夏さん)との感想も出た。