遺産分割トラブルの調停、沖縄で急増 17年で2・5倍に 相続、権利意識強まる


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那覇家庭裁判所(資料写真)=那覇市樋川

 沖縄県内における遺産分割を巡るトラブルなどの調停件数が全国水準を上回るペースで増えている。司法統計によると、2017年に那覇家庭裁判所に申し立てられた遺産分割の調停は152件で、2000年の60件に比べて約2・53倍となった。同時期の全国の申し立て総数の増加は約1・37倍。相続の相談を受ける機会が多い司法書士からは「以前より(家族間や親族間でも)相続の権利を主張する意識が強くなっている」などの指摘が上がる。

 遺産分割に関する那覇家裁への調停申し立ては、平成が始まった1989年は39件にとどまっていた。2011年に初の100件超えとなる134件に達し、それ以降、7年連続で100件を上回っている。

 那覇家裁を含む全国の家裁への申し立て件数は、2000年の8889件から17年は1万2166件に増えた。

 県司法書士会の上原正一会長は「県内でもこの10年から20年で(相続人らが)インターネットで法律などを調べるなどして、相続の権利を主張する意識が強くなってきた。昭和の頃にはなかった状況だ」と家裁での調停が増えてきた背景を指摘する。

 トートーメー(位牌(いはい))は長男が継ぐものという風潮は今も残る一方で、近年は貯金や不動産などの遺産はきょうだい間で平等に分けるよう主張する傾向が顕著になっている。しかし、トートーメーを継いだ家は旧盆などの行事のたびに準備に追われ、沖縄独特の慣習が円滑な財産分割を難しくしている。

 上原会長は「長男家が難儀をし、費用も負担する。『財産を等しく分割することが、本当に平等と言えるか』との声も聞く」と明かす。

 専門家からは相続に関する知識を深め、迷ったら早めに相談してほしいとの指摘が上がる。高齢化して認知症などで判断能力が低下しても、財産への不利益が生じないように支援する「成年後見人」を選んでおく「成年後見制度」や、家族に資産を託して管理や処分を任せる「家族信託」などの選択肢もある。

 財産を子どもへどう相続するか考える世代へ向け、上原会長は「元気なうちに話し合い、遺言書をぜひ作ってほしい」と促し、遺産相続のトラブルを避けるためにも早めに話し合うよう呼び掛けた。
 (古堅一樹)