県議会が独伊視察 沖縄の“異常”痛感 駐留米軍、運用に大きな差


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 県議会総務企画委員会(渡久地修委員長)の委員が1月下旬、日本と同じ第2次世界大戦の敗戦国であるドイツとイタリアを視察し、両国での米軍駐留の実態を元首相らから聴き取った。渡久地委員長は「在沖米軍の異常さを痛感した。改善に向け諦めずに取り組む必要がある」とする報告書を3月にもまとめ、玉城デニー知事らにも提言する意向だ。

ラルフ・ヘヒラー市長(奥側左端)と面会する県議会総務企画委員会のメンバー=1月21日、ドイツ・ラムシュタイン=ミーゼンバッハ(渡久地修委員長提供)

 渡久地氏によると、視察団はまず米空軍基地があるドイツ南西部のラムシュタイン=ミーゼンバッハ市で、ラルフ・ヘヒラー市長らと面会し、米軍駐留の功罪について説明を受けた。負の面は騒音が最も大きい問題だという。住民団体代表も参加する騒音軽減委員会が存在感を持っており、一定の歯止めになっている。沖縄で問題となっている米軍関係者による事件・事故に関しては、同市では1960年代には頻発したが、現在は減少している。

 米軍駐留のメリットは経済効果という。基地外に7千~8千人の米軍関係者が住んでカネを落とすことや、産業が少ない同市にとって基地関係の雇用効果も大きい。

 米軍関連の事務所なども課税対象となっており、年間160万ユーロが納められている。日本では「思いやり予算」で負担している電気代や、基地外から供給される地熱の料金も同市では米側が支払っており、市長は「基地は財政的なメリットになる」と総括した。

 だが、ほとんど経済波及効果もなく、騒音だけがもたらされる周辺自治体には、米軍駐留に否定的な住民が多いのも事実という。

ランベルト・ディーニイタリア元首相(中央)と面会する県議会総務企画委員会の県議=1月24日、イタリア・ローマ

 同基地での航空機の離着陸はドイツ国内法で年間約4万回に制限している。ここ最近は年約2万回の離着陸しかない上、実態に合わせて10年ごとに見直す仕組みになっている。午後10時から翌午前6時までの飛行や、病院や学校上空の飛行も原則、認められていない。

 続いてイタリアの首都・ローマに移動した視察団はランベルト・ディーニ元首相と、レオナルド・トリカルコ元NATO第5空軍司令官とそれぞれ個別に面会した。両氏が口をそろえるのは、イタリア人のNATO軍司令官が駐留米軍の行動を掌握している点だ。元首相は「彼ら(米軍)に勝手なことはさせない。なぜなら我々の国だから」と言い、元司令官は「イタリアの基地の総司令官がゴーサインを出さなければ米軍は何もできない」。

 つまり米軍はイタリア人総司令官から、いつ、何時間訓練するのか、何機飛ぶかなど、許諾を得ないと行動できない取り決めになっているという。元司令官は米軍関係者による事件・事故にも言及し「日本の法律が採用されないのはとんでもないことだ。犯罪はその国で裁かれるはずで、誰も手を出せないのは異常だ」と話し、日本の実情に違和感を示した。

 元司令官は米軍普天間飛行場にも詳しく「ヘリコプターの窓枠が(小学校校庭に)落下したが、他の国ではあり得ない」と指摘した。普天間飛行場が住宅密集地に近接していることから、「あんな形の基地は考えられないし、日本政府が解決しようとしないのが問題だ」と政府の姿勢を疑問視した。

 この点は元首相も同じ考えで「政府や国会が沖縄県の話をまともに受け止めていない」との認識を示し「私は戦後60年以上沖縄の状況を見ているが、日本政府の沖縄に対する対応は変わっていない」と指弾した。在沖米軍の在り方や日米地位協定について元首相は「日本政府が立ち上がり、米国に要望をぶつけなければ、この先何十年もこの問題は解決できないだろう」と話した。

 渡久地氏は取材に「両国とも毅然(きぜん)と米国に主権を主張し、対等な関係を築いていた。沖縄の基地問題や日米地位協定改定も日本政府が毅然と臨めば解決できると実感した」と視察の成果を語った。 
  (山口哲人)