ネット無料広告で被害 沖縄県内事業者 高額請求相次ぐ 契約自動更新で有料に


社会
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 県外の業者がインターネット上での無料求人広告の掲載を県内の事業者に勧誘し、契約すると一定期間後に高額な掲載料を請求してくるケースが昨年末に相次いでいたことが9日までに、関係者への取材で分かった。契約した県内業者によると、一定期間後に契約が自動更新され、掲載が有料になるとの口頭説明はなかった。事前に送られてきた申込書や後に届いた書類には有料契約について小さく記載されていた。県内では平均有効求人倍率が5年連続で過去最高を記録し続ける人手不足の中、被害は昨年末に集中していた。

 消費者問題に詳しい高良祐之弁護士は「5~6年前から全国的に問題になっていた手口だ。書類をぱっと見ただけでは自動更新や有料契約について分からない書き方をしており、見落とすように誘導するずるいやり方だ」と指摘した。

 高良弁護士が把握するケースでは昨年9月から11月にかけて、関東に本社を置く4社から10~50万円の高額請求をされた。県外業者は県内求人誌やハローワークに掲載されている求人票に基づいて電話で勧誘をしていた。支払いを断ると東京地裁に提訴すると通知し、たいていは3~4万円の原稿作成料名目の支払いのみを求めて和解を提示するという。

 高良弁護士は「東京で訴えられたら費用がどれだけかかるか分からないから、払えそうな金額を巧妙に提示してくる」と指摘した。

 県内の求人募集会社が運用するサイトへの求人掲載料は数万円程度で1件十数万円は法外な額となる。県消費生活センターによると、2018年度に同様の被害相談は14件あり、そのうち10月以降が12件と年末の繁忙期に集中していた。同センターの宮城巌主幹は「『無料』というキーワードは悪質商法に用いられることが多い。口では何とでも言えるので、書面に書いていて納得できないことは電話で何度も確認してほしい」と注意を呼び掛けた。

 高良弁護士は被害の全容把握のため、ネット上で情報提供を求めている。URLはhttps://freecm.ti-da.net


◆被害者「詐欺まがい手法」

 無料広告をうたい、明確な説明をしないまま一定期間後に契約が自動更新され、高額な掲載料を請求され、支払った経験がある那覇市の会社経営者の50代男性は「沖縄の人手不足につけ込み、明らかに小規模企業を狙ってきている詐欺まがいの手法だ」と憤る。

昨年、高額な掲載料を支払った男性=8日、那覇市

 ハローワークに求人募集を掲載した直後の昨年9月、男性の会社には東京の業者から広告掲載の勧誘電話がかかってきた。若い男の声で「今なら3週間無料です」との連絡が頻繁にあった。煩わしいので承諾するとファクスで書類が送られてきた。小さな字でびっしりと書かれた契約書を精査しないまま契約した。するときっちり3週間後に18万円の請求書が届いた。

 「解約通知が来なかったので自動更新をした」。電話先の若い男は言った。男の言うとおり、書類は満3週間の2日前、会社に人がいない土曜日に届いていた。書類が入った封書の外見は新たなサービスを紹介するような体裁で、解約に関する記述は書面の裏に小さく記されていた。

 男性は当初、業者に抗議したが、やり取りが煩わしくなり金を支払った。求人に応募してきた者はいなかった。男性は「3週間無料とは聞いたが、自動更新するとは聞いていない。マニュアルがきちんと用意されていて、特殊詐欺のように反社会的勢力が運営しているのではないかと感じた」と語った。

 ある県外業者は本紙の電話取材に「最低限の説明をした上で書類を送り、申し込みをするかしないかは企業に委ねている。誤認させたり、うそを言ったりしたことはない」と説明した。

 昨年末に被害が多発したことを受けて、県内求人誌やハローワークを運営する沖縄労働局は、顧客や利用者に注意喚起をする方針だ。