―県民投票の意義をどう考えているか。
「基地問題だけに焦点を絞って投票するのは大変良いことだ。従来より言われているように、選挙はいろんなしがらみがあり、昔は地盤、看板、カバン、今は組織、人気、利益で決まると言われる。だから選挙とは別に辺野古の賛成、反対を問うのは意味がある。米国ではプロポジッション(提案)と言い、重要な問題について選挙と合わせて有権者に賛否を問うのはよくあることだ」
―県民投票を求める背景をどう見るか。
「長い歴史で見ると、沖縄の政治文化は中央政府の差別と強要の政策に対する反発だ。薩摩藩の侵略、『琉球処分』、沖縄戦、サンフランシスコ平和条約、今も70%の米軍基地が置かれている状況だ。政府が沖縄を外交の道具として使っている感じがあり、反発を繰り返してきた。このパターン、鎖を断ち切らないといけない。それを断ち切ろうとして頑張っている。辺野古の問題もそうだ。『辺野古基地ができなければ普天間は返さない』、そんな条件はもともとなかった。辺野古基地も差別や犠牲の強要だ」
―県民投票によってその鎖を断ち切れるか。
「辺野古については諦めている人もいるし、諦めてはいけないと言う人もいる。現状では日本の立法、行政、司法の三権にあまり期待できない。だから我々沖縄県民は自分たちで決めるということを主張しなければいけない。日本の国の一部ではあるし、難しいではある。依然として厳しいのは国際環境だ。自由、平等、民主主義といった世界的に良いとされる価値よりも、武力で政策が決まってしまっている状況がある」
「県民投票が成功しなければ中央政府も反省もしないし、政策を押し付け続けるだろう。『オール沖縄』への反対意見もあるかもしれないが、沖縄県民のためになるかどうか考えて結束した方がいい。県内での分断や分裂は中央政府が喜ぶだろうが」
―5市長が事務を拒み、全県実施が危ぶまれた。
「投票権を阻害するのは民主主義と自治に反する。民主主義というのは、市民が主権者ということだ。議会や市長が権限を持っているのではなく、市民によって選ばれ、権限が与えられている。あくまで市民が主権者であり、それに反するのは非民主的だ」
「(選択肢の)『どちらでもない』というのは意味がない。政治は妥協だと言ったらそれまでだが、本末転倒の議論に終始していたように思う。条例制定の時に、もう少しきちんと議論すべきだった」
―辺野古の新基地をどう捉えているか。
「新しく、得体の知れない基地だ。弾薬庫や訓練所も造る、いったん埋め立てが始まると狭いから、拡張すると言って巨大基地になりかねない。伊江島の訓練場に行くには名護の上空も飛ぶだろう。騒音問題や基地公害、事件・事故は必ず起こるだろう。それは避けられない」
(聞き手 県民投票取材班・中村万里子)
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名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票について、基地問題に取り組んできた識者や政治家ら“重鎮”たちに見解を聞いた。
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ひが・みきお 1931年1月9日、名護市生まれ。沖縄外国語学校卒業後、ニューメキシコ大学、カリフォルニア大学に留学。琉球大教授から79年に副知事に就任。沖縄振興開発金融公庫副理事長を経て、90年ブセナリゾート社長に就任。2010年6月に退任し、ザ・テラスホテルズ特別顧問。県医科学研究財団、沖縄アメリカ協会などを創立。ガリオア・フルブライト沖縄同窓会会長。名桜大学名誉客員教授。