「乞食行進」の活動記録 沖国大・鳥山教授ら「陳情日記」を発刊 阿波根さん足跡たどる


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伊江島の土地闘争を記録した「陳情日記」を手にする沖縄国際大学の鳥山淳教授=27日、宜野湾市の同大

 【伊江】米軍統治下の伊江島で土地闘争に取り組んだ故阿波根昌鴻さんらの活動を記した「陳情日記」が28日、発刊された。沖縄県伊江村の住民が取り組んだ那覇市の琉球政府前での陳情活動や、本島を縦断して抗議した「乞食行進」など、1955年6月から10月までの期間を記録する。阿波根昌鴻資料調査会の鳥山淳沖縄国際大教授(沖縄現代史)らが編集した。

 「乞食行進」は55年7月21日から翌56年初頭にかけて行われた。当時の新聞報道は55年7月末で途切れたため、それ以降の行進団の行動は分かっていなかった。「陳情日記」の記述で、9月に国頭を巡っていたことが分かった。

 陳情団と琉球政府のやりとりについても詳述している。陳情団に対して、当時の与儀達敏副主席が「(土地接収に伴う住民の立ち退きを解決できなければ)職を辞める覚悟をしている」と発言したことなどが記されている。鳥山教授は「琉球政府は(米軍と住民の間で)板挟みだった。なんとかしたいと思ってもその権限がなかった」と解説する。

 「陳情日記」は、阿波根さんの足跡や伊江島の歴史を伝える「わびあいの里」に保管されていた。複数の島民で記したとみられる。鳥山教授は「当時の資料と組み合わせると、状況が具体的に理解できる」と強調した。

 わびあいの里は2日午後3半時からと3日午前9時から、伊江村農村環境改善センターを主会場に「陳情日記」の学習会を開く。3日午前10時からは鳥山教授の解説がある。「陳情日記」は500部発行。1冊800円(税込み)。問い合わせはわびあいの里(電話)0980(49)3047。