比嘉真美子、夢かなえ万感 17番起死回生のバーディー ダイキン女子ゴルフ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
18番 ウイニングパットを沈め優勝し、両手を上げてギャラリーの声援に応える比嘉真美子=10日、南城市の琉球GC(ジャン松元撮影)

 序盤の通算10アンダーの独走から、比嘉真美子はバーディー一つを挟んで2ダブルボギー、3ボギーで六つスコアを落とす。残り2ホールを前に、4人が並ぶ2位との差は2打差に。幼い頃からの夢だったダイキン優勝は簡単ではなかった。想像以上に「体が緊張していた」。直前の連続ボギーに、ギャラリーから「あいえなー」とため息も漏れ迎えた17番(パー4)。直前の大雨はやんだが、右からは横なぐりの風。ここで起死回生のバーディーを決め、観衆は逃げ切りを確信した。

 その17番は強風下のティーショット、98ヤードからピンそば2メートルに寄せたセカンド、急に風がぴたりとやんだグリーンで沈めたバーディーパットのいずれもが「完璧だった」。2位と3打差に戻して右拳を握った比嘉。たたいても取り返す初日から通底した集中力を象徴するホールだった。

 18番をパーで締め、かみしめるように下を向いて、小さくガッツポーズ。「やっと終わった」とほっとしつつ、「夢か現実か、さまよってる感じ」と夢心地の優勝コメントとなった。

 小5で初めて大会のボランティアをし、不動裕理らに憧れて14年。そのダイキンが、プロ通算5勝目の舞台となった。昨季はキャリアハイの賞金ランキング4位。賞金女王について問われると、「まだ考えていないが、優勝争いできょうみたいなプレーなら通用しないでしょうね」と気を引き締める。

 ツアー優勝で世界ランクを上げるほど見えてくる東京五輪出場に、「チャンスがあるなら全力でつかみたい」と意欲を見せる。ひとまずは「まだ(今季)39試合の一つが終わったばかり。あと38試合でどういうゴルフをしていくか」。その視線は既に次の戦いへ向いている。
 (石井恭子)

◆母は見守り抱き締めた

優勝を果たした比嘉真美子(右)と抱き合い、祝福する母彰子さん

 楽ではなかった最終日の比嘉真美子のプレーを、母の彰子さん(61)は1番からずっとついて見守った。最終18番はグリーンが見える位置に立ち、ウイニングパットを決める娘へ、満面の笑みを浮かべ拍手を送った。近くにいた関係者らと何度も握手を交わし、ホールアウトした比嘉に駆け寄り、強く抱き締めた。「おめでとう」。悲願のダイキン初優勝をたたえた。真美子は「お母さん勝ったよ」という気持ちで抱き合ったという。「シーズン中もオフも全力でサポートしてくれる」母と、一番先に優勝の喜びを共有したかった。

 2位との差は、16番を終え、2打差まで詰まった。彰子さんは「これまでのゴルフが変わったようだった。緊張しているんじゃないかと思った」。優勝を目前にしながら苦しむ様子にひやひやしていた。

 しかし、17番で待望のバーディー。ガッツポーズする比嘉と同様、彰子さんも優勝を確信した瞬間だったという。宮里藍以来、15年ぶりとなった県勢の優勝。彰子さんは「本当に良かった。ほっとしている。家族で喜び合いたい」と喜びは尽きなかった。