
世界遺産の中城城跡を中心とした県営中城公園の整備で、県土木建築部は公園内にある民間のホテル跡の解体手続きを進めている。沖縄の復帰前後に「中城高原ホテル」として開業が計画されたが、1975年の沖縄国際海洋博覧会を前に建設途中で営業を停止。40年以上にわたって廃虚と化してきた。県は3月末までに解体業者を決定し、2019年度中の撤去を予定する。今後、周辺の中城城跡や遺跡を生かした歴史体験の場として整備していく。
ホテル跡は、中城城跡近くの南西側の最も高台に位置している。戸建て風の大小17棟が尾根沿いに連なり、展望棟やプールなどもある。延べ床面積1万1千平方メートル。撤去が進まない間に全国的にも知られた廃虚スポットとなり、撮影ロケに使われたこともあった。

中城公園は1997年に県営公園として整備が始まった。県は「公園整備に支障がある」として建設途中で放置されたホテル廃虚の撤去を検討していたが、所有者との補償交渉が難航していた。県営公園化の前から地元の中城村や北中城村と撤去補償の問題を抱えてきたという。
県は昨年8月、所有者の一部と建物の残存価値に関する補償契約に合意し、現在、解体業者を決める入札手続きを進めている。解体工事に当たっては、首里城から続く宿道(ハンタ道)などの文化財調査や希少動物への影響調査、アスベストの適正処理などを実施する必要があり、県の費用負担で工事を発注している。
所有者への補償金額について県都市計画・モノレール課は「相手方との関係もある」として現時点で公表していない。19年度は用地の取得も進めるという。撤去後については「歴史を学習、体験する拠点として、中城村、北中城村と協議しながら整備手法や運営主体を調整していく」と説明した。
(与那嶺松一郎)